9月27日 vs拓殖大学 ○ 107―74
9月28日 vs拓殖大学 ○ 102―87

 第4週目。いよいよリーグ戦も折り返し地点まで来た。ここまでリーグ戦は慶大と明大が6勝で並び、それを1敗の筑波大が追う展開となっている。慶大と明大はいよいよ5週目に直接対決となる。去年の順位から上位ランクとなっている両チーム(慶大2部2位、明大同3位)が下位チームと対戦するのはこの週で最後である。ともに8連勝で直接対決を迎えたい両雄。しかし、両者の結果はくっきりと分かれることとなった。

大一番を前に取り戻した慶大らしいバスケット

まず、慶大。これまで無敗だが、内容が伴ってこなかった。しかし、この拓大との2戦では両方とも「先行逃げ切り」という本来の形を見せて2勝。ジャッジに振り回されちぐはぐな展開になる場面もあったが、きっちり修正し内容も良かった。
特に良かったのは土曜日の1戦目。明大戦でもテーマになるであろう「ポイントガードを抑える」ことが、完璧に出来た。拓大のエースガードの#1宮城が無得点。#1宮城はベンチに下がる時間帯が多く、佐々木HCも「途中で交代したっていうのは、うまくいってないからってこと」と、リーグ戦が始まって初めて満足げにコメントした。

もちろん調子が上向いてきた要因はこれだけではない。拓大との対戦では前週まで本調子でなかった#7岩下(2年・芝)が大活躍。2戦合計で56得点23リバウンド12ブロックという数字を残した。

「いつもうちがやっている、岩下にスクリーンをかけてノーマークにしてそこへ入れる、というのを(今回は)意図的に相当やらせたんです。それが随分といい試合やった原因かな?今まではあんまりそういう細かい指示を全然出してないので、なんとなくゲームに入ってなんとなくやる、という感じ。今日は始めからその指示を徹底してスタートして、ほかのサインプレーを使うなってことで。それが良かった」(1戦目を終えて、佐々木HC)

#15酒井(2年・福岡大附大濠)や#4鈴木(4年・仙台二)は「涼しくなってきたから」と好調の要因を説明するが、2部では205センチの#7岩下は対戦するチームにとって脅威の存在だ。「マッチアップの選手が小さかったので、中でもポイント決めないといけないところだったので、少しは自分の仕事ができました」と岩下。これまでは国士舘大・#13馬、順天堂大・#10山本、白鴎大・#33ピーターなどとのマッチアップでパワー負けする局面が多かった。しかしここへ来て身長も10センチ以上有利になり、線も細い相手とのマッチアップとなった。明大のインサイドも、#7岩下と比較すれば体格で劣る選手ばかり。これでオフェンスでの強力なオプションが1つ増えたこととなった。

全ての歯車が噛み合ってきた慶大。良い形で、次週の明大との対戦を迎えられそうである。

暗転の2敗……追い込まれた明大の「金丸晃輔依存」

一方、明大は絶好調の国士舘大と対戦した。会場はこの週一番の好カードを一目見ようと立ち見が出るほどの客入りだった。ただ、明大は慶大と同じ6連勝でも内容が充実している。果たして、初戦の1Qで17点のリードを奪った。やはり、明大は強い。私の心は早くも次週の「全勝対決」へと移っていた。
しかし、2Qから徐々に国士舘大が点差を詰める。明大はキーマンの#14金丸晃輔が徹底マークに合い、思うようにオフェンスを組み立てられない。国士舘大のセンター馬がいつも通り次々とリバウンドをもぎ取ると、点の取り合いになった。最後は国士舘大#4寺嶋のブザービーターが決まり、99―97。明大についに土がついた。アップセットは止まらず、翌日もこのカードは大接戦に。国士舘大が崖っぷちのところでまたもブザービーターを連発すると、いつしか試合はダブルオーバータイムとなった。試合はまたもブザービーターを沈めた国士舘大が制し、明大にあまりにも重い2つ目の黒星がのしかかった。

明大の弱点が出た2試合と言えるだろう。オフェンスで#14金丸晃に依存。2戦目こそ第2のスコアラーとして#21川崎が27得点としたが、その他の選手は多く取っても15点ほど。悪くない数字だが、1試合平均で約40得点を記録する#14金丸晃との格差は歴然としている。その#14金丸晃もこの国士舘大との2試合では相手の徹底マークにより、思うように得意の外角シュートを打てない場面が目立った。結局は「ポイントガードの#6伊與田さんからのワイドオープンが多い」と慶大・酒井が話すように、#14金丸晃の外の得点パターンは限定的だ。
また、国士舘大との2戦目ではやや暴走気味のプレーも目立った。#14金丸晃の少々無理な体勢からのシュートは以前にも見られたことだが、危険なファールなど、競っているにもかかわらずまるで大差でリードを奪われているようなプレーを連発。アンスポーツマンライクのファールが無かったのが不思議なくらいだった。

完全に立場逆転。慶大優位と見る直接対決の行方は……

冒頭でも記したように、この2戦を終えるまで、慶大と明大は6戦全勝で並んでいた。だが、同じ6勝でも対戦相手との1試合の平均得点差は慶大の19.50点に対し、明大は34.83点。内容の差は歴然としていた。しかし、慶大が連勝を8に伸ばしたのに対し、明大はよもやの連敗で一気に3位に後退。両者の立場は一気に逆転した。

ただ、慶大に驕りや慢心は無い。

「漠然と『国士舘が勝つかな』しか考えてなかったんで……何て言うか……そんな気にしてなかったんで。明治が2敗しても僕らが2敗したら意味ないですし、僕らは全勝で行こうという目標なので、そこまで気にしてないと思いますけど。本当にひょっとして、もしかしたら心の中のどこかで『やった!』と思っているかもしれないですけど、全然関係ないです」(#10小林・福岡大附大濠)

「相手がどうこう、というのは関係なく、自分たちのバスケをするしかないんで。相手はポイントガードを中心にしっかり外を確実に決めてきて、リバウンドも飛び込んでくるチーム。ただ、気持ちの面で負けないで、まず要所は金丸晃輔っていうポイントゲッターを抑えて、あとはガードに対してしっかり二ノ宮がプレスをかけて、相手にいつものバスケットをさせずにやれれば来週もしっかり勝ちきれる試合は出来るはずなので、あとはリバウンドです。そこをしっかりと今週詰めていって、また2勝出来るように頑張りたいです」(#7岩下)

抑えるべきポイントはまず、PG#6伊與田とポイントゲッター#14金丸晃のみ、と言っていいだろう。慶大は既にその対策を進めている。ポイントガードを抑えることは、現にこの4週目に出来た。残るは、#14金丸晃への徹底したディフェンス。#14金丸晃には、外だけでなくインサイドへのカットインもある。そうなった場合は岩下のブロックが重要になる。
上り調子で5人全員でバランスよくバスケットを展開する慶大か、もう1つも負けられない状況に追い込まれ#14金丸晃の爆発力を中心にオフェンスを構築する明大か。
この2日の試合内容を見て取り、直接対決は慶大優位と見る。

(2008年10月3日更新)

文 羽原隆森
写真 羽原隆森、金武幸宏
取材 羽原隆森、阪本梨紗子、金武幸宏