《夏の博物館・美術館特集》特別展「縄文-1万年の美の鼓動」(東京国立博物館)

夏の博物館・美術館特集

東京国立博物館(東京都台東区)で来月2日(火)まで開催中の特別展「縄文-1万年の美の鼓動」。約1万年前の縄文時代の人々の生み出した美をテーマに、様々な資料を通して日本の美の原点をたどっていく。記者が訪れた日は休日ということもあり、大変多くの人で賑わっていた。

本展は、「暮らしの美」「美のうねり」「美の競演」「縄文美の最たるもの」「祈りの美、祈りの形」「新たにつむがれる美」の六つの章で構成されている。

そもそも縄文時代は、縄目の文様を持つ土器が使われたことに由来する。今から約1万3000年前に氷期は終わりに近づいて温暖化が進み、現在の日本列島の景観が形成された。縄文時代は温暖な自然環境を活かして、狩猟や漁撈、採集生活が営まれていた。そういった中で発展していき、未だ謎に包まれた文化の様相を展示している。

中でも目玉の一つが縄文土器だ。模様で埋め尽くす「埋め尽くす美」や、粘土を装飾として貼り付けた「貼り付ける美」などに分けて展示されている。いずれも精巧な装飾であり、年代によって異なる美的感覚が読み取れる。さらに「美の競演」というテーマで、日本の他にも中国でおこった馬家窯文化の「彩陶」、インダス文明の「彩文土器」、メソポタミア文明の規格化された形の土器といった、世界各地の文明毎に異なる性格を持つ土器が展示されている。当時世界の至る所で多様な土器が使用されていたこともわかり、それぞれを比較することも可能である。日本の美の独自性を見出す事ができるのも注目すべき点だ。

そもそも、土器は装飾を全く施さない滑らかな状態でも実用性には問題がない。それにも関わらず、縄文土器は細かい部分まで丁寧に施されている。そこからうかがえるのは、「造形芸術」という美術品としての性格だ。縄文文化は、常にあらゆる芸術を生み出してきた日本の「美の原点」だともいえる。

そして、今回の展覧会では史上初の試みが行われている。縄文時代の国宝6件すべてが一堂に会したことだ。

国宝 火焰型土器 新潟・十日町市蔵(十日町市博物館保管) 写真:小川忠博 新潟県十日町市 笹山遺跡出土 縄文時代(中期)・前3000~前2000年

中でも「火焰型土器」は、歴史の教科書でもよく取り上げられているので、一度は目にしたことがあるだろう。縄文時代中期(紀元前3000~2000年)に作られた土器は、炎が燃え上がるようなデザインが特徴だ。本来煮炊きの道具だということを忘れさせるような圧倒的存在感を放っている。

国宝 土偶 縄文のビーナス 長野・茅野市蔵(茅野市尖石縄文考古館保管) 展示期間:7月31日(火)~9月2日(日) 長野県茅野市 棚畑遺跡出土 縄文時代(中期)・前3000~前2000年

また、女性を模った「土偶 縄文のビーナス」は、その形状から妊娠していることが見てとれる。そして、「ビーナス」という名の通り、女性を聖なる存在つまり女神として偶像化して当時の人々は崇めた。またこのような土偶は通俗の大きさのものだけでなく、小指程度の大きさのものもいくつか展示されている。その控えめな小ささからは性に関する恥じらいのようなものも感じ取れた。形は違えども、人間の本能としてあるものは1万年もの年月を跨いでもほぼ不変なのかもしれない。

「縄文美の最たるもの」といえど、当時の特有の感性はもちろん、時代を超えて人間に通底している感性も見出す事ができるのではないだろうか。

そのほか、会場の合間にはグッズ販売所があり、縄文土器の形をしたクッキー型や土器のレプリカなど、鑑賞の合間につい手に取りたくなる面白いグッズを見て回れるのも魅力の一つだ。

本展は、日本の美の原点を贅沢に味わえる貴重な機会だ。縄文時代にタイムスリップしたかのような館内で、「美術品としての縄文」の神秘性を実際に味わっていただきたい。

(大廣さくら)

特別展「縄文-1万年の美の鼓動」

2018年7月3日(火)~9月2日(日)
会場:東京国立博物館 平成館(東京都台東区)
時間:9時30分~17時(金曜・土曜日は21時まで、日曜日は18時まで/入館は閉館の30分前まで)
休室日:月曜日
料金:一般1600円 大学生1000円 高校生900円


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