「自分の中に揺るぎない“目標”があれば、どんなことがあっても道に迷うことはないと思います。だからこそ、自分について徹底的に知ることが大切なんです」

世界を飛び回って映像を届けたいという幼い頃からの憧れを叶え、今もなお世界に向けた日本のテレビづくりを支える森守弥子さんに、慶大での経験や夢を叶える秘訣について話を聞いた。

 

幼い頃の憧れと慶大時代の学び

小学生の頃に見たテレビの報道番組に出てきた海外特派員に憧れて、将来は世界を飛び回ってニュースを伝える仕事に就きたいと志した森さん。「慶大では1、2年生で卒業に必要な単位を全て取り、3年生から1年間アメリカに留学しました」

インディアナ州の大学に留学した森さんは、そこで社会問題について身を以て学んだという。「初めて見たスラム街は衝撃的でした。ホームレスだらけの街で〝どうやって自分の身をも守るか″ということから学んでいきました」

学びを深めるにつれてスラム街で生きる人々の現状と理不尽な社会の仕組みを目の当たりにした森さんは、物事の根源的な問題が何なのかを知ることこそが解決に向けた第一歩になると実感した。そして、報道記者として事実を伝えることで社会問題の認知を広めたいと思ったという。

 

男性社会的な色の強い業界でのキャリア

今や女性の社会進出やキャリアアップが大きな声で叫ばれるようになった社会で、森さんは女性が働くことについてこう話す。「女性だからという理由で不利益を被らないようになったらいいですよね」

入社当時は、森さん自身も女性だからという理由で取材を断られたことがあったそう。「初めて番記者になった東京地検特捜部の部長から女性記者の取材は受けない、と言われました(苦笑)。それでも当時の上司は担当を変えなかったので、特捜部長の元に通って、信頼関係を築こうと毎日必死に頑張りました。結果として、その方への取材では私が現場にいなくても“取材場所”を開けて、待っていただけるまでになりました(笑)」

 

夢を叶えた人生観

念願の海外特派員として、日本のメディアでは女性で初めてのワシントンD・C・支局長にも就任し、幼い頃からの夢を叶えた森さん。忙しくても「夢が叶った!」との高揚感があったそう。そんな森さんに夢を叶えた秘訣を聞くと、無意識的にやっていた習慣が鍵になっていたと教えてくれた。「子供の頃から目標を書き出す癖がありました。今思うと、紙に書いて、自分自身に改めて目標を認識させていたことが、目標の実現に近づいた秘訣だったと思っています」

夢を叶えるには自分自身について知ることが大切なのだと話す。

 

これからのテレビ

各種配信サービスが浸透し、テレビというメディア媒体の存在意義が見直される現代で、テレビができることを聞いた。「テレビはこれまでに築き上げてきた、ものづくりの経験が強みとしてあります。世界の人からは日本のコンテンツと言えばアニメが代表的だと思われがちですが、日本のドラマやバラエティもコンテンツとして世界に誇れると思っています」
現在はビジネス推進局のビジネスコンテンツセンターと、社会貢献局のサステナビリティ推進部の兼務で働く森さん。「日本の番組を海外に販売することは、まさに日本のソフトパワーを世界に広げていくことなのでやりがいを感じます。また仕事を通じてSDGsを広めるなど社会貢献できる仕事も面白いです」

 

塾生へメッセージ

「近い将来、社会人となる皆さんのお手伝いをしたいです。来年も春学期に『コンテンツビジネスの現状と将来』と言う授業をNetflixと開講する予定です。人生でやりたいことを叶えるハーバード式オリエンテーションも盛り込む予定なのでコンテンツ業界に興味がある人だけでなく、将来に迷っている人にも是非履修してほしいです」

 

【プロフィール】森守弥子さん
慶應義塾大学卒業。ハーバード大学大学院とジョージタウン大学大学院修了。フジテレビジョンに入社後、報道局に配属。社会部、経済部、政治部記者のほかワシントンDC支局長などを歴任。子供ができたのをきっかけに編成制作局グローバル事業部へ。2023年7月からCSRやSDGsと海外ビジネスの兼務に。

太田小遥