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知りたい、性的同意。慶大生の『性的同意ハンドブック』 ~学生が発信する意味とは~

“性的同意”という言葉に聞き覚えのある慶大生は、どれほどいるだろうか。もし初めて耳にしたのなら、学生団体「Safe Campus」と一般社団法人「Voice Up Japan 慶應支部」が共同で作成した、“性的同意ハンドブック”を読んでいただきたい。そこには、今私たちに必要な理解が記されている。

“性的同意ハンドブック”インターネット上で無料ダウンロード可能。
ダウンロードはこちらから

〇”性的同意ハンドブック”って何?

性的同意とは、すべての性的な行為において確認されるべき同意のことであり、ハンドブックにはその詳細が、分かりやすく説明されている。

パステルカラーに彩られたイラスト、的確な言葉選び。数値に基づいた性暴力の現状と、その対策。インターネット上で、誰でも無料でダウンロードすることができる。本紙では、ハンドブック制作の背景を取材した。

(左)学生団体「Safe Campus」理工学部4年 佐保田美和さん (右)一般社団法人「Voice Up Japan 慶應支部」文学部2年 出井希さん

 

〇一般認識より広く定義した、”すべての性的な行為”についてお聞かせください

佐保田美和さん(以下、佐保田):定義は、一般社団法人「ちゃぶ台返し女子アクション」さんのものをお借りしました。これをチョイスした理由は、慶大関係者を対象にして行った、「性暴力に関する実態調査」で、性暴力に対する従来の認識がとても極端だということが明らかになったからです。

ハンドブック(p.3 数字で見る、性暴力の実態)にも載っているように、性暴力は知人の学生間で発生しやすく、セクハラやボディタッチもそれに含まれます。人によってはただのスキンシップとして許容されても、嫌な気分になる人だっている。その個人差をきちんと認識してもらいたくて、「同意のないボディタッチなども性暴力に含まれる」ということをインフォームしました。

友人関係や上下関係、異性・同性に関わらず、相手が嫌な思いをしていないか、一言確認するだとか、自分のことを一歩引いて考えてみてほしいです。

出井希さん(以下、出井):“性暴力”と聞いてまず上がるのが、レイプだと思います。でも、それ以外を性暴力として認識しているのでしょうか。残念なことに、そこは曖昧ですよね。“すべての性的な行為”という大前提を設けることで、正しい知識を広めたいと考えました。

〇個人差というと、被害者に対する認識も人によって違いそうですね。

佐保田:はい。被害者が勇気を出して誰かに相談したのに、「いや、大したことないでしょ」「あなたにも非があったんじゃないの」と言われ、さらに深い傷を負う。いわゆる”セカンドレイプ”が多発しています。これは第三者の基準で被害の大きさが決められてしまうことによって起こることです。この問題の根深さは、私が大学に通うなかで、肌感としてすごく感じています。

被害は、誰かの基準で決められるものじゃない。人によって感じ方は違うし、それはアンケートへの回答でも証明されています(p4 日常生活に及ぼす影響)。

被害者らしさなんてないんだよ」っていうことを伝えたいです。

出井:「性被害=強かん」というイメージのもと、”被害者らしさ”の基準が設定されていることが多いように思います。例えば、”被害者らしくない”シチュエーションは、冗談に見せかけたセクハラとか。そこからレベルが上がっていく形で、「ここからここまでが被害者で、それ以下は日常の中のちょっとした何か」というようなイメージを、みんなが持ってしまっている。

被害者自身さえ、「私はここまでに達していないから」と考えてしまい、放置されている事例がすごく多いんです。じゃあ、グレーゾーンにいる人たちはどうしたらいいんだろう。周りも自分も被害を認めないから、なかったことにされて改善もしない。だからこそ傷ついた人もいるのではないでしょうか。

被害者”のラインをなくすことで、グレーゾーンにいる人たちを救いたいです。

痴漢被害を友達に相談したとして、「そんなの私にもよくあるから大したことないよ」と返される。これはよくあるシチュエーションかもしれませんが、「被害者らしくないよ」と言われているのと同じことです。絡みに絡まった否定、なぐさめに見せかけた沈黙。そこからまずなくしていきたいです。

〇第三者がかける言葉や行動は心的にすごく重要ですね。ハンドブックではバイスタンダーについても詳しく説明されていました。

佐保田:はい。性暴力に対して、個人ができる最も有効な手段の一つが、バイスタンダーとしての介入です(p6 バイスタンダーとしてできること)。日本国内の性被害は「見えにくくて入りやすい場所で起こる」と言われています。例えば、夜の公園のトイレなどです。

一方、調査によると、大学内の性被害は飲み会が起点となっています。飲み会は部外者の侵入が難しく、みんなの目もあります。それにも関わらずこのような現状が続いているということは、見ている人が止められていないのだと思います。見ている人がただの傍観者に止まらず、「それちょっとおかしいよ」とか、「あ、スマホなくしちゃった」とか、少し視線を逸らせて間を作る。それだけで、性暴力そのものが防止できるんです。

その他にも、ハンドブックでは具体的な手段や動画を紹介しています(p9 動画で学べる性的同意)。時代の流れとしても、性被害を減らしたいと考えてくれている人はきっと多いはず。潜在的に問題意識を持っている人たちには、ひとつ武器を渡すことができたんじゃないかと思っています。

出井:被害者・加害者・傍観者(バイスタンダー)の中で、多くの人が日常で一番なり得る確率が高いのはバイスタンダーだと思いますし、そうでなくてはなりません。バイスタンダーとしての心得をきちんと知っておかないと、セカンドレイプの加害者になることが多くなってしまいます。

もし被害者が出たときに、その人をさらに傷つけてしまわないために、自分は何をすべきなのか、何をしてはいけないのか、その知識だけは持っていて欲しいです。

 

〇セカンドレイプの加害者が生まれるのは、どんな状況ですか?

出井:実際によく感じるのは、ちょっとした一言に含まれるトゲです。知人から相談されたときだけではなく、セカンドレイプはSNS上でも頻発しています。「コメントしているだけだから、それ以上の被害性や加害性も生まれない」と思っているのかもしれません。

でも、自分のコメントには他人の傷を深めるトリガーがあるという認識が必要です。コミュニケーションの際には、相手が性被害のサバイバーである可能性も憂慮して言葉をチョイスして欲しいです。

 

(次ページ:性的同意を”自分ごと”として捉える 声を上げやすい社会に)

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