【つれづれ評論】『7つの習慣』スティーブン・R・コヴィー 1996年 キングベアー出版

「ほかのすべての自然の力と同様に、引力は敵にも味方にもなり得る。習慣の持つ引力は、あなたが今行きたい方向に進むことを妨げているかもしれない。しかし(中略)強い力だからこそ効果的に使えば、習慣の引力は有意義な生活を確立するのに必要な秩序をつくり出してくれるのである」
ミリオンベストセラーを記録し30カ国語に翻訳された本書。日本でもビジネスマン必携の書として話題を呼んだため知っている人も多いかもしれない。
では本書がビジネスマンのためだけの著作かというと、決してそうではない。タイトルにある「7つの習慣」というのは、個人、家庭、学校、会社―生活のすべてにおいて役に立つものであり、私たちの人生を豊かで安定したものにしてくれる原則なのである。
今、「原則」という言葉を使ったが、これは本書に何度も登場する言葉であり、7つの習慣すべての中心を貫く一本の太い柱のような概念である。
すべての人には中心がある。それは学校や仕事、お金や所有物、家族や友人など多岐にわたるだろう。しかし、これらは突然なくなったり、手のひらを返したように態度を変えたりする。
ここで「原則」を自分の生活の中心に置くことを筆者は強く主張している。正しい原則は万人に共通で決して消えることはなく、継続的に頼ることができる。これを中心に据えると、自分の安定性、方向性、知恵、力を充分に得ることができ、周りのすべての事柄がバランスよく見えるようになる。
本書は手軽にできるテクニックを羅列した単なるハウツー本ではない。7つの習慣は簡単ではなく、実行するには多くの時間と努力が必要となる。その分、ものにすることができればこれからの人生がよりよいものになることは間違いない。
本書を何度も読むうちに、7つの習慣が展開される順番の意味や、7つが相互に深く関わっていることが見えてくる。一つひとつの習慣を身につけるために、何回でも読むべき、読みたくなる著作だ。一度きり読んで本棚にしまい込んでおくには、もったいなさ過ぎる。
また、著者の息子であるショーン・コヴィー氏は、本書をもとにして「7つの習慣 ティーンズ」を著している。同じ7つの習慣を10代の目線に即してよりやさしく解説しているが、「ティーンズ」という文字を見てあなどるなかれ。その内容は父親の著作に負けず劣らず役に立つ。こちらも併せて読んでほしい。
(陶川紗貴子)