<2021年4月1日追記>
2021年3月21日に処分の一部撤回がありました。全塾協議会のリリースをご確認ください。
https://keio-zenkyo.net/download/reports/release_20200321.pdf


2019年末、慶應義塾大学の部活動の「顔」とも言える應援指導部が活動自粛を発表した。その應援指導部の活動再開を全塾協議会は3月29日の定例会にて全会一致で承認し、應援指導部は4月1日より活動を再開する。なぜ全塾協議会は処分を行ったのか、活動再開の承認に至った理由は何か、全塾協議会関係者と應援指導部に取材を行った。

 

覗き行為を起こした部員

應援指導部は12月に発覚した問題行為により自主的に活動停止を発表した後、全塾協議会によって処分されていた。当初、問題行為の内容や処分の理由は全く明らかにされていなかったが、ようやく明らかになった。

全塾協議会がツイッター上で公表した資料では、盗撮行為や覗き行為や下着盗み等が行われたことが、事実として確認されたと記載されている。詳細についてはプライバシーの観点から発表されていない。2019年の夏の合宿にて問題が発生したこと、2018年の夏の合宿においても詳細が分からないものの、覗き行為があったことが應援指導部の総会で発表があったとの記載もあった。[ 1 ]

全塾協議会がツイッター上で公開した資料を読むと、特別監査人が覗き行為などの問題に対して、部の体制上の問題を指摘することを重視している様子が伺える。

処分の理由については、最も大きな要因は、特別監査人から部内の報告体制に重大な問題があると報告されたこと。さらに、部内の細かい事情を知る部員で再建案が広く協議されるべきであると報告されたことなどから全塾協議会は事態を容認できないとする、塾生代表が設置を主導した処分審査会の答申をもとに應援指導部の活動を停止をすべきとの判断に至ったという。

 

活動再開へ

應援指導部は活動の再開に向けて再建案を作るための話し合いを重ねてきた。
2月期定例会で應援指導部は全塾協議会の議員に対して再建に関する議事録を提出し、この資料について議員の一人は「深い議論がなされていることに驚いた」と述べた。
報告を受けて全塾協議会は、應援指導部内に問題を起こした部員が残存していないこと、またその旨を全塾協議会として認識していることを決議した。

3月期定例会では、活動再開にあたり「監査会」や相談窓口の設置すること、チアリーディング部で行っていたファミリー制度を應援指導部全体で導入するなどの再建案を示した。これらの再建案によって不必要な上下関係を廃した自由闊達な組織作りが実現されることを目的としている。塾旗の掲揚は活動再開後も暫くは原則行われず、各所から要請があった時に対応する。

今回の活動再開の決定は、この2月の報告と今月の報告を踏まえたもの。活動再開を承認した塾生代表の後藤圭祐氏(経3)は「(應援指導部の)部員たちの再始動に向けた強い意気込みが伝わってきた」と述べている。

 

活動再開後も制限が続く

今回の活動再開では、チアリーディング部と吹奏楽団の2部門で再出発を図る。原則、応援活動でのリーダー指揮は行われない見通し。

これは、全塾協議会が旧リーダー部構成員の應援指導部への活動参加を認めないという処分を行ったためだ。しかし処分では全塾協議会の判断でこれらの制限を部分的又は全面的に破棄できるとしている。
(應援指導部へ行われた処分については、こちらをご覧ください。)

リーダー指揮が加わった完全な再始動が待たれる。

 

塾生代表コメント

塾生代表の後藤圭祐氏(経3)は塾生新聞会の取材に対し、「オンライン上で行われた全塾協議会3月期定例会にて、應援指導部から再建案についての説明を受け、その内容が適切であると判断し、また部員たちの再始動に向けた強い意気込みが伝わってきたため、4月1日からの活動再開を承認しました。これから、新たなスタートを切り、再び慶應義塾の福利厚生の道を歩んでゆくこととなります。大切なのは、再建案の内容がきちんと実行され、部が良き方向に実際に変わっていくかどうかです。塾生代表、全塾協議会、そして塾生みんなで温かく見守っていきたいと思います。塾生代表として、應援指導部の明るい未来を全力で応援しています、ガンバレ!」とコメントを寄せた。

 

特別監査人コメント

應援指導部への調査を行ったのは全塾協議会事務局で事務局長を務める岩舘則明氏(経3)。塾生新聞会の取材に対し、以下のコメントを出した。

「全塾協議会の特別監査人としては、12月の問題発覚から全塾協議会の処分決定まで、事態の情報収集を行ってきました。その中でも、一番難しかったのは、情報の公開です。大学外のメディアまで関わってくるような案件でしたので、被害者の保護の問題を考えた時に、情報の公開は慎重に行わなければなりませんでした。一方で、何も情報を出さなければ、全塾協議会として何かしらの処分を下すことへの支持が塾生から広く得られないので、どこまでの情報を出すべきなのか常に頭を悩ませていました。
應援指導部は、リーダー部以外にもとても多くの構成員がいますし、幅広く塾内イベントに関わる団体です。活動を再開する方向の処分が全塾協議会から下されると想定した時に、より多くの情報と全塾協議会による処分をもって、應援指導部への塾生からの信頼が再び得られる必要があるということは、ずっと脳裏にありました。処分が決定されていく過程で、塾生代表と議員の協議の下で最大限の配慮を行いながら、公開する情報を決めました。
結果的に、リーダー部の解散や部内意思決定への下級生参加などの、大きな変化が應援指導部で起こったと思います。應援指導部には、全塾協議会所属団体として、今後とも状況を注視しながら、活動に協力していきたいと思います。」

 

応援指導部コメント

今回の活動再開の決定を受けて、應援指導部は塾生新聞会の取材に対し以下のコメントを出した。

「應援指導部は活動停止後に始まりました再建プロジェクトを今後も継続して行い、全ての活動に誠心誠意励んで参ります。
私達應援指導部は応援を通じて、「慶應義塾の精神を継承し、慶應義塾の精神が浸透するきっかけをつくる」ことを追求し続けています。観客の皆様と一体になって作り上げる、『社中一体の応援席』にこそ、選手に勇気を届けられる真の力が宿っていると考えています。
毎回の応援の活動が選手にとって、観客の皆様にとって、應援指導部員にとって大事な思い出の1ページとなるように、「慶應義塾の応援席に来て良かった」「また来たい」と感じていただけるように全身全霊活動に取り組んでいます。
少しでも興味をお持ちいただいた方には、是非一度応援席に足を運んでいただけますと幸いです。応援席で一人でも多くの方にお会い出来る事、楽しみにしております。
最後に、應援指導部を支えてくださっている方々、いつも応援席にお越しいただいている皆様に心より御礼申し上げます。
本年度も何卒よろしくお願い致します。」

應援指導部はホームページを更新し、活動の再開を報告した。
應援指導部ホームページ:http://keio-cheer.com/

 

参考資料

[ 1 ] 全塾協議会が発表した資料(資料リンク

(学部学年は2020年4月1日時点)