今年から三田に来たのですが、最近二郎に取りつかれました。二郎を1週間食べ続けるとどうなりますか。(文2男)
 「二郎を1週間も食べ続けたら太るに決まってんだろ! 単なる嫌がらせじゃないか!」依頼メールを見て絶対にやりたくないオーラを出す所員N(文2男)。それを見て出た所長の言葉は、二郎のスープとは対照的にあっさりしていた。「やってみなはれ」
 体重を計ると65・2キロ。こうしてNの1週間に及ぶ二郎との闘いが幕を開けた。
 ラーメン二郎は、慶應三田キャンパスの横に本店を構え、30店舗以上を持つチェーン店。チャーシューは「豚」と呼ばれ、実際、その名に相応しい巨大なチャーシューがのる。麺が茹で上がると、店員に、「ニンニク入れますか」と聞かれ、客はそこで「野菜、ニンニク、カラメ」などと言って量や味を調整してもらう。
 ジロリアンという言葉がある。とあるラーメン愛好家によれば、二郎はなぜか常習性がある食べ物で「ああ、二郎食べたい」と思ったら、他のラーメンでは代替できない。そのため、通常のラーメンでは満足できずに、二郎を食べ歩くようになった人をジロリアンと呼ぶ。
 今回の依頼では三田本店で4回、関内店で3回、目黒店で2回の計8回二郎を食べた。初回は関内。「エライ並んでるなぁ」と呟きつつ最後尾に並ぶと、店員に声をかけられた。「最後尾はあっちですよ」「はぁ?」。横入りされたと勘違いされたNは他の客の暑い視線を浴びながら本当の最後尾に並ぶ。かれこれ1時間弱並んでようやく二郎との勝負。三田本店に比べると全体的にボリュームは控えめなので、楽々1日目終了。
 日を重ねるにつれ、鏡を見ると顔の光沢が増してくる。「脂だ!」。「Nさん、なんか今日顔が輝いて見えます」「そうだろ。コラーゲンっていうやつだ」
 そして魔の最終日。この日は3時に三田本店で大ラーメンを食べた。でましたチョモランマ盛り。いつもより量が多く感じられたが、朝飯を抜いたため難なくクリア。しかし6時に事務所に戻ると、「二郎行こうぜっ!」と上司のO(商3男)に誘われ、断りきれず目黒へ。三田二郎を食べ、ほぼ満腹状態で目黒二郎を食べる。「俺の胃袋は宇宙だ」と懐かしいセリフを呟きながら、Nは奇跡的に完食。「ハハハハ! なんだその腹! ばっかじゃねーの!」なにも知らないOは「メタボ」「マタニティー」とか言ってNのことをからかった。
 こうして1週間二郎を食べ続けたN。事務所に行って所長にその旨を伝える。「体重を計ってみなさい」と所長。ピピッ。体重64・5キロ。「やっ、痩せてるゥゥ!」しかもスープに含まれると思われるコラーゲンのおかげで肌はツルツルに。ただ、考えられないことではない。昼に二郎を食べると、かなりの満腹状態になる。だから、その日は何も食べなくていい。というより、食べたくなくなるのだ。つまり、1日2食になり、結果的に摂取するカロリーが減って痩せたのかもしれない。所長に言われた。「お前も完全にジロリアンだな」と。
        (異唆尾)