10月から「マイナンバー」の通知が開始された。「マイナンバー制度」とは日本国民一人一人に12桁の番号を割り当て、納税や社会保障、災害対策の分野で情報を効率的に管理する制度。重複している行政の一元化を図ることが目的だ。

今月から番号の通知が始まり、来年の1月から制度の運用が開始する。番号通知後、希望をすれば身分証明書としての機能も果たす個人番号カードを受け取ることもできる。 先月制定された改正マイナンバー法によって、将来的には預金口座や医療分野にも活用される見込みだ。予防接種の記録や検診の結果が閲覧できるようになることも考えられている。

平成29年1月からは、「マイナポータル」も利用可能になる予定だ。これにより、インターネット上で個人情報のやり取りに関する記録が確認できるようになる。利用する際は「個人番号カード」に格納された電子情報とパスワードを組み合わせて本人認証する。

しかし今年5月に起きた日本年金機構の情報流失問題により、セキュリティを不安視する声も挙がる。政府は、マイナンバーの不正入手や漏えいは法律で厳格に処罰するとしている。また、第三者機関である「特定個人情報保護委員会」が、適切に管理されているか監視、監督すると説明している。

企業は就業者以外に、その扶養家族分の番号も管理しなければならず、その負担は計り知れない。また、パートータイマーやアルバイトも、勤務先へマイナンバーの提出が求められる。

他にも問題はある。住民票の住所を移さずに転居した人や、DV被害者で身を隠している人々に通知が届かない恐れがあるのだ。その数は全人口のおよそ5%にあたる275万世帯にのぼる可能性があると、総務省の自調査で明らかになった。住民票と異なる住所で受け取れる特例を設けたが、申請期限は先月25日で過ぎている。

さらに、買い物の際にカードを持っていなければ、軽減税率の恩恵を受けられなくなる可能性もある。

このように、勤労者をはじめとして主婦、学生、国民全員に関係のある制度であるにも関わらず、認知度は高いとはいえない。内閣府が行った7月の調査では、制度の内容まで知っていると答えた人は43・5%にとどまった。多くの問題を抱えていることもあまり認識されていない。

政府からの情報提供があまり多いとはいえないことも認知度が上がらない要因だろう。内閣官房のウェブサイトには、詳しい情報が載っているが、その存在を知らない人も多いだろう。広告もあまり印象的には感じない。

しかし、なにより一番の原因は人々の関心の薄さではないか。特に先月19日には、参院本会議で安全保障関連法の可決というホットな話題があり、今回はその陰に隠れてしまった感も否めない。

活用案の審議は継続されており、その範囲はますます広がっていくだろう。実用性の高い利用方法も今後生み出されていくはずだ。しかしそれと同時に、大量の自分の情報が国に管理されることへの緊張感も忘れてはならない。
(吉川利黎)