
「ニンニク入れますか?」
--三田キャンパスの正門を出て右に少し歩くと、黄色い看板が目印のラーメン二郎三田本店が現れる。ここは全国に44店舗を展開するラーメンニ郎の総本山であり、1968年創業の歴史を持つ超人気店だ。「慶大生の心のふるさと」と呼ばれ、さまざまな場面で塾生を惹きつけてきた。ニンニクたっぷり、ボリューム満点。その唯一無二の組み合わせが生み出す一杯は、食べ終えた瞬間には「しばらくはいいかな」と思わせながらも、数日後にはまたあの香りとボリュームを求めて足が向いてしまう。そんな中毒性こそ、ラーメン二郎の魅力だ。しかし、そのボリュームと独特の注文ルールから、「存在は知っているけれど行ったことはない」という塾生も少なくない。特に初めての来店では、周囲の常連客の動きが速く、自分だけ戸惑ってしまうのではと不安になることもあるだろう。
そこでこの記事では、アクセスから食べ終わるまでの流れ、注文時の注意点、そして店内でのマナーまでを紹介し、初めてでも迷わず二郎を楽しめるように案内したい。三田生だけでなく、日吉生も何かと三田行く機会があるがゆえ、ぜひ参考にされたい。
--アクセスと立地 三田本店は慶應義塾大学三田キャンパスの正門や西門から徒歩1分という至近距離にあり、授業の合間や帰り道にも立ち寄りやすい。公共交通を利用する場合は、都営三田線・浅草線の三田駅から徒歩約8分、JR山手線・京浜東北線の田町駅からは徒歩約10分ほどだ。朝から昼時は特に混雑し、二時間ほど並ぶことも珍しくない。
--並びから入店まで店に着いたら、まずは列に並ぶ。前に五人程度しかいなければ、先に店内の券売機で食券を購入する。それ以上の行列の場合は、まず列に加わり、前の人が食券を買いに行ったタイミングで自分も向かう。券売機は入口すぐ左にあり、券を買ったら必ず列に戻る。戻る際は順番が崩れないよう気を配り、大人数で訪れる場合も横に広がらず、一列で静かに並ぶのがマナーだ。券売機のメニューはシンプルだが、内容と量を把握しておくことが重要だ。基本の「小ラーメン」は麺量が約300グラムと、一般的なラーメンの約二倍にあたる。名前に騙されないように。これに対し「大ラーメン」は約400グラムで、食べきるにはかなりの食欲が必要だ。チャーシューを増やしたい場合は「ぶた入り」、さらに倍増する「ぶたダブル」もあるが、小ラーメンにも分厚いチャーシューが二枚入っているため、初来店では小ラーメンを強くおすすめする。価格は2025年時点で「小ラーメン」700円、「大ラーメン」750円だ。列が進み、店員から「食券見せてください」と声をかけられたら、手元の食券を提示する。この時が麺量や固さなどを調軽できるタイミングだ。「少なめ」「半分」「三分のー」といった麺量の調整や、「カタカタ」「固め」「柔らかめ」といった茹で加減、そして「油なし」などのリクエストは必ずここで伝える。提示を求められなかった場合は入店後に食券をカウンター上に置く際に伝える。これを逃すと、コール時にはもう変更できない。耳を塞ぐイヤホン等は早めに外し、店員の声にすぐ反応できるようにしておこう。なお、裏メニュー的な存在として「麺マシ」が存在するが、これは「大ラーメン」の食券を提示する際に伝えることで食べられる。「大ラーメン」の二倍近くというとんでもない麵量になるので余程の自がない場合は控えよう。
--入店から退店まで順番が来ると店内に案内され、席に着く。着席したら、食券をカウンター上に置き、あとは呼びかけを待つ。やがて店員が「小ラーメンの方」「固めの方」などと声をかけてくる。これが、二郎ならではの注文最終確認、通称「コール」だ。コールではトッピングの追加を希望するかどうかを伝える。三田本店の基本トッピングは、「ヤサイ(野菜増し)」「ニンニク(刻みニンニク)」「アブラ(背脂)」「カラメ(味濃いめ)」の四種類で、この順番に沿って答えるのがルールだ。たとえば、ニンニクだけを入れたい場合は「ニンニクで」、ニンニクに加えてアブラとカラメを加えたい場合は「ニンニクアブラカラメで」、全て加えたい場合は「全部で」、何も加えたくない場合は「そのままで」と答える。量を増やしたいときは「マシ」、さらに増やしたい場合は「マシマシ」とインスパイア系の店では言えることがあるが、三田本店では控えめなオーダーが好まれるため、初回は控えるのが無難だ。また、「固め」だと提供スピードが早くなるのでスピードに自言がない人にはおすすめだが、その分コールのタイミングが早くなるので注意しよう。丼が目の前に置かれたら、まずは熱さと重さに注意して両手で受け取る。レンゲは備え付けられていないため、スープは直接すするか、箸で具材と一緒に味わう。山盛りの野菜の下に麺が隠れているため、早いうちに「天地返し」と呼ばれる食べ方を試すとよい。これは麺と野菜をひっくり返して、麺がスープを吸いやすくし、伸びにくくする方法だ。分厚いチャーシューは食べ応えがあるため、序盤に食べておくと後半が楽になる。食事中は私語や長時間のスマホ操作は控え、行列の後ろの人のためにもテンポよく食べ進めることを心がけたい。
食べ終えたら、丼とコップをカウンターの上に上げ、台を布中で軽く拭く。こうした後片付けは必須ではないが、店員への感謝の気持ちを示すマナーとして歓迎される。最後に「ごちそうさまでした」と一言添えれば、気持ちよく店を後にできるだろう。ルールを一度覚えてしまえば、二郎はもう怖くない。三度通えば、注文も動きもスムーズになり、立派な「ジロリアン」の仲間入りだ。その一杯には、単なる食事を超えた体験がある。
塾生として、この伝統と中毒性を兼ね備えた味を、三田の地でぜひ味わってみてほしい。
(金田悠汰)