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《記者が見つめた慶應》池上彰さんが語る メディア50年史

ジャーナリストの池上彰さん

塾生新聞が創刊された60年代末、主要なメディアは新聞だった。その後、テレビやインターネットが普及し、現代においてメディア環境は大きく変わった。

50年近くジャーナリストとして活動している池上彰さんは、「伝える立場」からどのようにメディアを見てきたのだろうか。

(構成=山田安希子)

在学当時の様子

私が慶大に入学した1960年代末、メディアの中心は新聞でしたね。テレビでニュースを流していたのはNHKとTBSだけでした。両者とも短時間の放送にとどまっていたので世の中の情報を知る手段は新聞しかありませんでした。しかし新聞も今のように新聞社それぞれのカラーはなく、どこも同じような内容の記事ばかり、そんな時代でしたね。

当時は全共闘運動による学生運動、いわゆる大学闘争が盛んに行われていた時期で、多くの大学で毎週のように集会やデモが起こっていました。警官隊と学生が衝突している様子を私も目の当たりにしたのですが、自分がこの目で見たものと、翌朝新聞で報じられる内容が全く違う、そのように感じざるを得ないことが多かったです。

新聞からテレビの時代へ

ちょうど大学3年生の冬、あさま山荘事件が起きました。長野県の軽井沢町にあった浅間山荘で左翼派過激組織「連合赤軍」が人質をとって10日間以上立てこもった事件ですね。その際NHKなどの各放送局は事件の様子を一週間以上朝から晩まで生中継していました。全国民がテレビにくぎ付けになり、人質が救助される際は視聴率が90%近くにまでなりました。

それまでは新聞がメディアの中心でした。しかしこの事件を機にテレビは新聞と違ってリアルタイムで事件を伝えられることを世間に知らしめたのです。テレビがメディアとして大きな役割を果たしていく時代に変わりましたね。

人の命を救う役割としてのメディア

テレビが果たす役割の一つに災害時に情報を素早く伝えることがあります。その際どのように伝えるのか、その伝え方が重要になります。

災害時の情報の伝え方が明暗を分けた出来事として1983年に起こった日本海中部地震が挙げられます。秋田県沖を震源とする地震に伴い、気象庁は大津波警報を日本海沿岸に発令しました。しかし地元の民放は通常の音楽番組の合間に「大津波警報が発令されています」と軽い口調で読み上げるだけ。当時大津波警報の意味がよく理解されていなかったためですね。しかしM7・7を記録した地震による大津波は日本海海岸地域を容赦なく襲い多数の死者をだす結果となりました。犠牲者の多くは津波が来ていることを知ることができずに逃げ遅れてしまったのです。

一方のNHKはすべての放送を中断して大津波警報を流し続けていました。「お互いに声を掛け合って避難してください」。放送を通じて訴えかけました。その結果たまたまNHKのラジオを聞いていたことで津波の到来を知り、難を逃れることができた人もいます。放送で何をどう伝えるかによって悲劇を生み出すことも人の命を救うこともあり得る、私自身もそれを強く実感しましたね。

世論の分断

話を現代に移してみましょう。現在のメディアは世論の分断を生み出すものとなってしまっています。

アメリカの主要メディアであるFOXニュースはイラク戦争の際ブッシュ大統領を全面的に支持したことから共和党寄りのメディアとなっていきます。

一方のCNNニュースはFOXニュースと比較すると民主党寄りのメディアとなっています。これによりそれぞれの党の支持者によって視聴するチャンネルが変わっただけでなく、支持層の有無によって街中で流れるチャンネルも変わってしまいました。今では自分の支持する政党寄りでないメディアを全て誤った情報、いわゆるフェイクニュース扱いする人が出てきたりもしています。メディアによって世論の分断が引き起こされている状況ですね。

このような分断はインターネットの登場によってさらに拡大します。インターネット上では人は自分の見たい記事だけを見る傾向があります。フェイクニュースが拡散されることで真偽の見分けがつかないこともあり、結果として世論の二極化、分断は加速しました。

これからのメディア

インターネットの登場によって事実と異なる報道が流布されることが増えてしまいました。しかし、この状況も徐々に変化していますね。

インターネット上ではファクトチェックと呼ばれる情報の真偽を検証する動きが広がっています。実際アメリカ大統領選挙の際、ヒラリー・クリントン氏が不利になるように偽の情報を流していたロシアのスパイ組織をFBIが起訴しましたし、日本でも9月に行われた沖縄県知事選でファクトチェックによってフェイクニュースが流布されるのを防ぐことができました。

また、差別的な要素を含む過激なサイトは広告収入を目的とすることが多いのですが企業間でもデマばかりを流すようなサイトや過激な発言が多いサイトには広告を掲載しないようにするなど、ようやくインターネットのなかでも自分たちで何とかしようという動きが広がっていますね。ネットが次第に淘汰されていくような時代にこれからなっていくのだと思います。

この特集の記事:

《特集》塾生新聞創刊50周年記念 記者が見つめた慶應 特設ページ

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《記者が見つめた慶應》池上彰さんが語る メディア50年史(当記事)

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