喜びも悔しさも準備あってこそ
「喜びも悔しさも準備あってこそ」


威厳に満ちた立ち姿。勝負を見守る真剣な眼差し、そして全力の応援。慶應義塾の勝負には、いつも応援指導部という力強い存在がいる。応援指導部リーダー部主将の堤史門さんも、これまで様々な試合を目にし、選手たちと共に闘ってきた。今回は、勝負の魅力を伺うと共に、勝負を迎える受験生へエールを送ってもらった。

勝負の良さは何といっても勝った時の楽しさである。「勝ったらいいな」。という思いが、常に根底にある気持ちだという。今はそう言い切る堤さんだが、昔から勝負や挑戦に魅力を感じていた訳ではなかったようだ。

「もともと自分は勝負事が好きな方ではなかった」。小学生の頃は、勝ち負けにこだわりも無く、負けたとしても悔しさも感じなかったという堤さん。しかし、それは物事に真剣に取り組んでいなかったからだ、と当時を振り返る。

慶應義塾高校に入学し、応援部に入部すると見えてくるものがあった。自分自身が日々過酷な練習をこなし全力で事前準備をし、また同様に全力で真剣に競技に取り組む選手たちの姿を見て、意識が変わった。勝つ喜びと、負ける悔しさを初めて感じるようになった。

勝負をする意味は、いかにその前の準備をするか、というところにある。事前に真剣に努力をした上で得られる、勝った時の嬉しさの大きさこそが勝負の魅力だと気が付いた。たとえ負けたとしても、何もせずに負けるより、出来ることをし尽くして負けた方がずっと意味がある、青春だといえる。そしてなにより、勝負に勝ったときの達成感は、それまでの苦労を帳消しにするほどのパワーをもたらす。

頑張ってないやつに頑張れって言われたくない。だから誰よりも頑張る。応援指導部で受け継がれてきたこの精神から、彼らは体育会にも引けを取らない過酷な練習をこなす。これが全力の努力であり、堤さんは「準備する力」だという。これが勝負には一番大切で、勝負の魅力を引き出すものなのである。

勝負において、事前の準備が重要であるのに加えて、最後の後押しは想いだという。諦めたらそこで終わり。だからこそ勝利を信じぬく力は、時に人を大きく後押しするのである。主将が教えてくれたこの二つは、いかなる勝負においても同じように重要なことであろう。

最後に、これから人生の中でも大きな勝負を迎える受験生へ次のような言葉を残してくれた。
「自分のやりたいことが出来る、楽しさももちろんある。そして様々な人に出会え、成長できる。辛い今を乗り越えた先、ここ慶應には全てがある。慶應義塾に飛び込んできてほしい。そして、受験という大勝負に勝った後には、慶早戦をぜひ見に来てほしい」

非常に励まされる、熱いエールである。
(濱田真優)