「周りのみんなが夏インターンに向けて準備を始めたけど、何をすればいいのか正直分からない」「2年生だけど就活について知っておきたい」という人は、慶大生の中にも多くいるだろう。
そのような人たちの疑問を数多く解決してきたほか、就活に関する情報を網羅した『就職活動が面白いほどうまくいく 確実内定』という本を出版した、ライターのトイアンナさんに、慶大生ならではの就活のコツを聞いた。

近年の就活動向と特徴

ここ数年は、就活生にとっては「売り手市場」であり、この場合就活生の中での格差が発生しやすいという。不景気の場合と異なり、就活を開始する時期に差が生じやすく、遅くなるほど結果が振るわない場合が多い。
また、「ワークライフバランス」を重視した企業選びをする傾向がある一方、ハードワークで知られる企業・業界への人気が高まっているとトイさんは指摘する。
では、就活を始めたばかりの3年生は、夏休みに向けて具体的にどのような対策を行う必要があるのか。それは、自己分析と企業分析、そしてエントリーシート(ES)の提出である。

自己分析は哲学ではない

「自己分析とは、自分の社会人としての適性をどのように示すかについて分析することです。決して『自分とは何か』と哲学的に考えることではありません」。トイさんは、自己分析についてこのように定義した。
そもそも、企業が欲しい人材というのは「チームワークによって数的成果を生み出せる」学生だという。このように表すと、一見難しく思えてしまうだろう。しかし、実際には多くの学生が、バイトやサークル、ゼミ活動などを通じてそのような経験をしているとトイさんは話す。
その上で、「ビッグ・ファイブ」という、人間の性格を5つの特性から分析する評価方法によって、自己分析を進めることが有効だという。「協調性」「外向性」「開放性(好奇心の強さ)」「情緒安定性」「勤勉性」の5つだ。
トイさんは、「自分がどんな特性を持っているか、性格診断ツールや他者からの意見を踏まえて分析すること。これによって、どんな企業・業界に自分の適性があるかどうか、知ることができます」と、自己分析の重要性を強調した。

企業分析はIRを見よ

自己分析を通じて自分の適性を把握したら、それにマッチした企業・業界を分析する「企業分析」が必要になるという。公式ホームページを参照することが一般的であるが、トイさんはそこに掲載されている「投資家関係(IR)情報が重要です」と指摘する。
IR情報には、企業としての業績や今後の成長に向けた方針など、投資家に向けた情報がまとめてある。「この情報をもとにして、志望動機を組み立てていくことが大切です」
ここで確実な企業情報を確認したら、さらに深掘りをしていく。具体的には、その企業の競合他社を調べて業界としての特性をつかんだり、社員による口コミサイトで生の情報をチェックしたりするなどが挙げられるという。

「勝てる」ESとは

ES執筆の段階においても、企業が欲しい人材を考えることが前提だとトイさんは述べる。「自らが金を稼ぐことができる人材であることを示すのが最重要です」。企業によって異なるニーズを企業分析で見極めることも、良いES執筆におけるポイントだそうだ。
完成したESの添削に関しては、企業へのOB・OG訪問にて見てもらうのが一番良いという。「経験豊富な実際の社員に見てもらう。これによって、その企業における『IRだけではわからない部分』も反映できます」

早期内定を目指すために

「就活は努力の総量によって結果が決まるものなので、あらゆる準備を前倒しにすることで有利になります」。トイさんはこのように述べた。
日系企業の新卒採用解禁は毎年6月1日からとされている。しかし実際には、外資系企業のみならず日系企業においても「内々定」は多く出ているという。
トイさんはこのような状況において「早くから就活を始め、失敗の経験を積むことが大事」と話す。失敗によって落ち込む必要はなく、そこで得られた改善点を次の就活で生かすことができるのだ。
また、就活に対して意識が高い友人が周りにいるかどうかも重要であるという。そのような人が周りにいることによって「自分も始めないと」という危機感が生まれるからだ。
ただし、1・2年生のうちは、目の前にある「自分にとって楽しいこと」に打ち込むべきだとトイさんは述べる。「チームワークや数的成果への挑戦を通じて、大学生活を楽しむのが良いと思います」

慶大生へのメッセージ

長年就活業界に携わってきたトイさんは、慶大生の特徴について「自己評価と他者評価の乖離が大きくなりがち」と指摘する。「親しい人からの評価よりも、自分について知らない人から客観的に評価してもらう方が良いと思います。OB・OG訪問はいい機会ですね」
試験が終われば夏休み。3年生にとっては本格的に「就活」が始まる時期だ。この夏で同期に差をつけられるか否かは、正しい情報を正しく活用できるかどうかにかかっているといえるだろう。

(松岡 秀俊)