本学の全学部から公募およびランダム抽出で選ばれた塾生たちが専門家の助言を受けながらSDGsを実現するための慶應義塾のビジョン・目標・ターゲットを提言するプログラム「塾生会議」。昨年度この会議で提言された「キャンパスでの料理教室」が、今年度から慶應義塾の公式プロジェクトとして始動した。今回は、本プロジェクトのリーダーを務める高橋怜那さん(文2)に、料理教室の様子や今後の展望を聞いた。
●塾生の心身の健康を支える料理教室
―この料理教室の目的は何ですか?
主に一人暮らしの塾生や将来的に自炊をすることを見据えて料理を学びたい学生に、履修登録科目には無い「家庭科」として、料理を学ぶ場を提供したいというふうに考えています。その背景として、一人暮らしによる孤食や、外食が増えた塾生に、栄養バランスの考えられた健康的な食事をしてもらいたいという想いがあります。ですが、それだけではありません。敢えてそのような料理を「つくる」ことを一緒に学ぶことで、「もったいない」がない、環境にも優しい調理方法を身につけてもらいたいと思っています。そして、みんなで学んだレシピの料理は、最後に実際にみんなで食べます。私が特に推したいのは、この「みんなで食べる」ということで、食を通じて塾生同士の交流を深め、塾生の心身双方の健康を支えたいと考えています。
●ゼロから学べる料理スキル
―6月に実施された第1回料理教室は、どのような内容でしたか?
第1回料理教室では、「野菜の切り方と市販品の活用」をテーマに、栄養士の方にお越しいただき、基本的な「切り方」や、簡単に作れる料理の実演をしていただきました。ご講演の後は、実際に教わったことをやってみる体験コーナーを設け、参加してくれた塾生の皆さんは講師の方々に積極的に質問してくれていました。その他にも、食材の紹介や調理における工夫などを教わり、最後、みんなでその日に教わったレシピの料理とご飯、お味噌汁、デザートをいただきました。
―実施してみて、感じたことは何ですか?
料理教室の最中も、最後にみんなでご飯を食べる時も、本当に皆さん積極的に参加してくれていて、とても嬉しかったです。みんな「とてもよかった」「また参加したい」といった感想を言ってくれましたし、何より、最後に笑顔でご飯を食べてくれているのが嬉しかったです。初対面の人も多いと思うのに、食べ物が人を繋げる力に感動しました。自炊してみたくなったというような意見も多く、「塾生の心身にも、環境にも優しい料理教室」の第一歩としては大成功だったのではないかと、我ながら思っています。
―次回はどのような内容を予定していますか?
第1回は、キホンのキからのスタートでしたが、第2回はほんの少しだけレベルアップして、キホンのホくらいまで行こうと思っています。具体的には副菜、特に小鉢関係をメインに扱おうと考えています。切るだけ、和えるだけ、よりちょっとだけ工夫が加えられるので、「自分で作った」感が増すかもしれません。ですが、SDGsの「誰一人取り残さない」原則のように、何か些細なことでもわからないことがあればもちろん講師の方々は丁寧に教えてくれます。「手軽に」「誰でも」真似できるようなレシピであることはお約束します。
●料飲業界の先駆者を招くトークイベント
―11月にはトークイベントも開催するそうですが、どんなことをするのですか?
協生環境推進室が開催する、食に関する協生環境推進ウィークの一環として「食の価値観の多様さに触れる」をテーマに、ゲストをお呼びします。ゲストの詳細は近日公開予定ですが、料飲業界の先駆者の方々です。
内容は、主に「ビーガン向けの和食」からお話が展開していく予定です。日時は11月6日(木) 午後6時15分〜7時45分、場所は日吉キャンパス来往舎の大会議室になります。多くの方のご参加をお待ちしています。
●「自炊の楽しさに気付いて」
―最後に、塾生へのメッセージをお願いします。
この料理教室を通じて、環境にも健康にも良い自炊スキルを身につけてもらうことはもちろんですが、何より「料理することの楽しさ」に気付いてほしいと思っています。
私がこのプロジェクトを立ち上げたきっかけは、一人暮らしの友人の乱れた食生活を何とかしたいと感じたことでした。私自身全く料理ができず、その友人ともよくテイクアウトのご飯を友人の家に持ち帰って食べていたのですが、ゴミ箱に溜まっていくテイクアウト容器を見て、環境への負荷を痛感し、健康にも悪影響だと気付かされました。幸い、友人は料理が得意だったので、教えてくれと頼んで、それまでの生活を見直すことになりました。しかし、友人の作る料理は、私には難しく、疲れて帰宅してから作る気にはなれませんでした。
だから、私たちの料理教室では、挫折せず続けられることをモットーに「手軽さ」を重視しています。ただのイベントで終わらせるのではなく、「家でもやりたい!」と思ってもらえるように企画しているので、ぜひ参加して自炊の楽しさを実感してもらえたら嬉しいです!
本プロジェクトでは、料理教室に参加できなかった人のために、料理教室の様子を撮影した動画やレシピをホームページで公開している。(閲覧には keio.jp認証が必要)。本記事を読んで、興味を持った方は、まずホームページをチェックしてみてほしい。
(成沢緑恋)