「皆さんに恩返しできるような泳ぎがしたい」。6月30日に三田キャンパスで行われた五輪出場壮行会にて、競泳平泳ぎ100m・200m日本代表である立石諒(環4)は力強くロンドン五輪への抱負を語った。
4歳からスイミングスクールに通い、小学生になって平泳ぎを始めた。将来の夢は「子どもが好き」ということもあり、保育士。水泳でオリンピックに出場することを意識し始めたのは、2004年のアテネ五輪で金メダルを獲得した北島康介の活躍する姿を見てから。当時15歳の立石は本格的に水泳に取り組むことを決心した。
2006年のジュニアパンパシフィック選手権では100mで銀メダル、200mで金を獲得。さらに2008年の北京五輪プレ大会において100m・200mともに2冠を達成し、「ポスト北島」と推す周りの声は多かった。
しかし、同年の北京五輪代表選考会では得意の200mで3位となり、出場権を逃す挫折を味わう。その後も国際大会で思うような結果が出ず、2009年、2011年の世界選手権では100mで9位と目立った成績を残せていなかった。
「正直、水泳自体を辞めようと考えた」時期はあった。しかし、ロンドン五輪出場を目指し、再び水泳と真剣に向き合うようになったのは、「体育会水泳部競泳部門の仲間をはじめ、たくさんの方の支えがあったから」と語る。
オフの日は高校、大学の同期と食事に行くことが多いそうだ。普段の何気ないことや懐かしい思い出で話は盛り上がり、「水泳についての話はほとんどしない」。競技から一旦離れ、束の間の休息を仲間と楽しむことが厳しいトレーニングに打ち込む原動力となる。
立石の平泳ぎの特徴は「効率の良い泳ぎ」にある。182cmの長身を生かしたストロークに加え、無駄な上下の動きが少ないフォームは水の上を滑るような泳ぎを生み出す。「ゼミの先生から泳ぎのアドバイスをもらっている」と話すように、スポーツ工学を専門とする政策・メディア研究科准教授、仰木裕嗣氏のもとで、自身の泳ぎにさらに磨きをかけている。
今年の4月に行われたロンドン五輪代表選考会では100m・200mで五輪出場を決めた。200mでは自己ベストとなる2分8秒17を記録。昨年の世界選手権の優勝タイムを0秒24上回り、3大会連続五輪金メダルを目指す北島康介に0秒17の差に迫った。「五輪選考会が終わって、練習を重ねるうちに自信が付き始めてきた」と意気込む。「スポーツ選手として、または1人の塾生として、五輪で一番良い結果を残したい」と壮行会の最後を締めくくった。
苦難を乗り越えて初めて五輪の大舞台に挑む立石諒。水の抵抗を最小限に抑えた美しい泳ぎで表彰台の一番上を目指す。
(塚本雅章)