慶應義塾大学歌舞伎研究会は、今年で創設97年を迎える伝統あるサークルである。また、学生が主体となって伝統芸能である歌舞伎を演じるという、全国でも珍しい団体である。しかし、コロナ禍の今、サークルは存亡の危機に立たされているという。我々はサークルの現状、そして未来について、代表の結城和臣氏(文4)と、二見遥氏(商4)に話を聞いた。

写真=歌舞伎研究会提供

コロナ禍で「伝統の断絶」危機

2022年の三田祭で歌舞伎を上演することは、サークルの3年越しの悲願であった。歌舞伎研究会は三田祭での歌舞伎の上演と、歌舞伎の鑑賞などを主な活動内容としていたが、コロナ禍ではどちらも難しく、存亡の危機に立たされたという。オンラインでは歌舞伎の魅力を伝えるのが難しく、今年もフェイスシールドを付けたうえでの上演など、大きな障壁が立ちふさがった。現在の部員数は5人、代表の2名が卒業してしまうため、来年には3人になるという。
コロナ禍におけるもっとも由々しき事態は、「伝統の断絶」だと二見氏は語る。活動が途絶える中で、継承されてきた段取りや職人とのつながりが失われつつあり、このままでは新しいやり方を模索する必要もあるだろうと語る。

写真=歌舞伎研究会提供

大学連携と若年層へのアピール

それでも、代表者のまなざしは未来に向けられている。近年では早稲田、明治、立教の歌舞伎サークルとも連携し、SNSを活用した若年層への歌舞伎のアピールにも力を入れている。また、部員が少ないからこそ、部員同士より親密な交流を行い、ライト層の部員がフェイドアウトしないように意識しているのだという。

写真=歌舞伎研究会提供

「歌舞伎の舞台に立てる貴重な機会」に飛び込んで

最後に、代表者にサークルの魅力、そして新入生へのメッセージを聞いた。両氏はサークルの魅力を「歌舞伎の舞台に立てる貴重な経験」にあるとした。家柄や血筋が重視される歌舞伎の世界において、学生が舞台に立てる経験はこのサークル以外にはそうそうない。「自分も地方から上京した時、歌舞伎に関してほとんど何も知らなかった。大学は何かを始めるのにぴったりの時期、歌舞伎に少しでも興味がある方はぜひ飛び込んでください」と、結城氏は語った。
3年後には創立100周年を迎える歌舞伎研究会。学生だけで歌舞伎という伝統芸能を実演するこのサークルの今後にぜひ期待したい。

(王駿)

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