2 thoughts on “岩切氏、四度目の挑戦で塾生代表 全塾新執行部が発足へ

  1. 今回の選挙で導入された「投票済証による割引」は、確かに投票率の向上に一定の成果を示したものの、選挙の本質に反するものではないか。学生の関心を引きつける努力は評価されるべきだが、「投票=得する行為」と捉えられるようになると、本来の「意思表明としての投票」が形骸化する懸念がある。
    実際のところ、低投票率という現象自体が、学生による「学生自治への消極的な不支持」の表れではないか。もしそうであれば、全塾協議会が現実を直視せずインセンティブで数字を上げることは、学生の本音を覆い隠すことになりかねない。利益供与的手法に頼ることなく、学生が自発的な学生自治の意義を感じ、意思を示す風土をどう育むか、あるいは、学生自治をどのように「店じまい」していくかこそが、これからの学生自治に問われる本質的な課題ではないか。

  2.  本結果は決して安易に喜ぶべきではないと断言できる。塾生代表選挙が、3度目の挑戦でようやく成立したという事実は、塾生自治の最低限の機能が辛うじて再起動したにすぎない。むしろ今回の過程で浮き彫りになったのは、直近の全塾協議会が、塾生の自治参加を喚起する地道な取り組みよりも、短期的な動員策に安易に依存する体質に陥っている現実である。生協クーポンという金銭的インセンティブは投票率を押し上げた一方で、「参加の質」を大きく損ない、選挙そのものの正統性を空洞化させた疑いが濃厚だ。出口調査における「割引目当てで候補者を選ばなかった」という証言、さらにフォーム最上段候補への票集中が物語るように、投票行為は意思表示から単なる通過儀礼へと矮小化されていた。

     第一に、割引制度が投票行動を強く刺激し、結果として民意を歪めた可能性は否定できない。実際、塾生代表・塾生議員とも最多得票はフォーム最上段の候補であった。割引だけを目的とする投票者がスクロールせずに送信すれば、票は自動的に当該候補へ流れる。設計自体がバイアスを内包していたと言わざるを得ない。

     第二に、岩切新塾生代表の前回選挙からの票増895票のうち相当部分が上記のメカニズムで生じたと考えられる一方、同氏は選挙運動停止処分を受け、その告知は期間中に6万回以上閲覧されている。ネガティブ情報が広く共有された状況で票が急増した現象は、投票行動の質的側面に深刻な疑念を投げかける。

    ~~全塾協議会選挙管理局の当該報告原文~~
    【立候補者に関するご報告】
    全塾協議会選挙管理局よりお知らせです。
    塾生代表再選挙において、立候補者・岩切太志氏が、選挙投票規則違反を行った事実が確認されました。
    すでに1度警告を行っていたことから、2025年5月24日16時30分をもって、同氏に対して選挙運動の禁止処分を決定・通達いたしました。

    全塾協議会選挙管理局では、今後ともすべての候補者に対して公平かつ厳正な選挙運営を行ってまいります。
    #全塾協議会 #塾生代表選挙
    ~~~~

     第三に、割引施策の継続可能性が問題だ。報道は全額自治会費負担の印象を与えたが、関係者によれば実際は生協と折半であり、執行額は20万円前後に過ぎない。同程度の投票率であれば年間6~8回の選挙を賄える計算となり、割引は「安価で手軽な延命策」と化す恐れが大きい。とある関係者は「山田さん以降、自力で塾生の民意を集められるリーダーシップがある塾生代表候補は出ていない。内田さんも、山田さんの応援演説で勝ったようなもの」と語る。また別の関係者は、『「全塾協議会が適正に評価されるまでの暫定的な処置」と大学には説明したが一度この楽さを知るとなかなかやめる決断はできないのではないだろうか」と指摘する。これらの「山田氏以降、強い求心力を持つ候補が不在で、割引という“麻薬“を断ち切れなくなる」との声は誇張ではあるまい。

     総じて、本選挙は学生自治の再建という点で一歩を踏み出したが、同時に〈本質的な強いリーダーシップ〉から〈低コストの動員策依存〉へと舵を切る転機ともなり得る。インセンティブはあくまで過渡的措置にとどめ、次回以降は現職実績の可視化や公開討論の充実といった本質的な参与促進策へ移行しなければ、今回の成立は単なる延命措置にすぎず、塾生自治の民主的正統性は再び形骸化しかねない。

     塾生や塾内メディアにおいても、「選挙が成立した」と安易に持て囃すのではなく、大局的かつ本質的な視点を持って、一連の結果に向き合うべきではないだろうか。

    コメンテーター M

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