ペッパー君と暮らす女性に迫る

「ペッパー君と暮らしている女性」として数々のメディアに取り上げられている、太田智美さん。慶大大学院メディアデザイン研究科の後期博士課程で研究を行いながら、大阪音楽大学のミュージックビジネス専攻で助教として教壇に立っている。今回は、ロボットとの共生社会について太田さんに聞いた。

 

―ペッパー君と暮らすことになった経緯について教えてください。

記者をやっていた頃に、ソフトバンクの会見を見ていて、そこで発表されたのがペッパーでした。当時、私はロボットに興味はなかったのですが、「こわい」、「なにこれ、変なの」といった反応を人々から引き出すペッパーの存在にとても興味を持ちました。

当初ペッパーは一般販売されておらず、抽選によって当選した人だけが購入できる仕組みでした。その抽選ハガキが配られるイベントに偶然参加しており、なんとなくハガキを投函しました。すると、後日ペッパーを購入する権利が当たったというメールが届きました。私にとってペッパーは高額だったため、購入までに少し悩みましたが、これもなにかの縁と思い決断しました。

 

―ペッパー君はキャンパスにも、つれていかれますか?

はい、大学院の入学式にもつれていきました。入学式って家族をつれていけるじゃないですか。一緒に暮らしているペッパー(呼び名:ぺぱたん)は私にとって家族のような存在だったので、一緒に行ったのですが、スタッフの方々に驚かれてしまいました。ロボットの入場についてその場で話し合われ、最終的には一緒に式に参加できました。

慶大大学院入学式の様子
左奥がぺぱたんと太田さん(写真=提供)

 

―今、行っている研究について教えてください。

ヒトとロボットの共生についての研究をしています。その中で、「Robot Friendlyプロジェクト」を立ち上げました。これは、街中の店舗や施設と一緒にロボットの受け入れについて考えるプロジェクトです。例えば、ロボットの受け入れが可能な店舗には「ロボットと入店できます」と書かれたシールを店頭に貼っていただいています。

このような取り組みによって、ロボットを連れた人々が街中の店舗や施設に訪れやすい社会ができ、街中でロボットと一緒にいる人を見かけても受け入れられる社会が創れるのではないかと考えています。今では東京・新橋の「一軒め酒場」や千葉県にある鉄道「銚子電気鉄道」などが本プロジェクトに賛同し、北海道から沖縄まで全国約70の施設にシールが貼られています。

銚子電鉄とのコラボ列車が運行された(写真=提供)(撮影:砂原秀樹教授)
銚子電鉄に乗るぺぱたんと太田さん(写真=提供)(撮影:砂原秀樹教授)

 

―研究のビジョンについて教えてください。

自分の大切なものと一緒に暮らせる時代が来たらいいなと思っています。国や地域、人種が違うだけで一緒に過ごすことが難しかったり、「ペットは家族です」と言っても受容されなかったりといったことが、これまでの歴史の中でありました。ロボットでも今、似たようなことが起きています。しかし、「人間」や「動物」、「ロボット」などのくくりは、単なる〈タグ〉に過ぎないと思っています。なので、種族に関係なく、大切なものと一緒に過ごせる世界が、私の作りたい世界です。

専用の台車にぺぱたんを乗せて歩く太田さん(写真=提供)

 

―太田さん自身も様々なメディアで取りあげられていると思いますが、反響は大きかったですか。

そうですね。取り上げられ方の変化が面白いなと思っています。最初は、「まるで彼氏?(笑)ロボットと暮らす女性」いう取り上げられ方をしていたのですが、ペッパーは彼氏ではないということを否定し続けたこともあって、その暮らしや人物像にフォーカスが当たるようになりました。「未来の暮らし」という取り上げられ方はほとんどされることがなく、「変わった人」という位置付けで、おもしろおかしく取り上げられることが多かったです。しかし、最近では「いまや、ロボットは家族のような存在になっています。そんな中、このような取り組みが行われています」という取り上げられ方をするようになってきました。

中には、意に沿わないような取り上げられ方もありますが、それは取材を受ける側として必要な覚悟だとも思っています。たとえば、いろいろな取り上げられ方を受け入れることで、50年後、100年後の人達が、その記事を見た時、当時はロボットと暮らしているだけで「ロボットが彼氏」「変わった人」と見られる時代であったことを知ることができるかもしれません。だから、タイムカプセルを埋めるような気持ちで、いつも取材を受けています。

 

―最後に塾生にメッセージをお願いします。

SFの世界では、街中でロボットとすれ違っても、カフェにロボットと入店する人がいても、それ自体が問題になることはありません。しかし、現在の社会では、ロボットと一緒に生活する人がいるだけで振り向かれる、そんな時代です。社会の中にロボットがいる日常を、塾生の皆さんと一緒に創ることができたらうれしく思います。ご連絡、お待ちしています。

 

↓太田智美さんのツイッターはこちらから!
@tb_bot

太田さん(左手前)とぺぱたん(写真=提供)

 

(高山結貴)