今年も各企業の夏季インターンシップの募集が始まっている。24卒の学生の中には、ここから就職活動(以下、就活)を本格化させようという人も多いのではないだろうか。今回は合同説明会や就活情報サイトの運営を手掛ける、株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソースの福重敦士営業局長に「24卒が就活を始めるにあたって」話を聞いた。

福重敦士営業局長(写真=提供)

今後の就活の流れ

24卒の学生にとって、来年の3月1日「就活解禁日」が大きなひとつの節目となる。

しかし、企業がエントリーシートを受け取ることができるのは「解禁日」以降とはいえども、エントリーシートの提出期限を「解禁日」から1、2週間のうちに指定している企業が多いため、3月から準備を進めるのでは間に合わない。今のうちから自己分析の実施や合同説明会を聞きに行くことはもちろん、夏休み中には夏季インターンシップ(以下、インターン)に参加するなど、早めから十全な準備を進めることが大切だ。

 

就活を始めるうえでまずすべきこと

福重氏によると、就活の基本の「キ」は、「アウトプットを意識して行動すること」だという。

就活では、自己PRなど自分の口で説明することを求められる機会が多い。しかし、今までそうした経験がなかった人にとってはあまりに高いハードルであろう。

そこで彼は「まず人に伝えることを意識して説明会に参加することから始めてみてほしい」と話した。

 

自己分析をどのように進めていくか

企業の採用面接では、たびたび一言で「自分」を表すことが求められる。しかし、始めから一言で表そうとするのは、本のタイトルを最初に決めるようなもの。自己分析をして準備を進めていこう

 

その準備には、多様な方法があるとしつつも、福重氏は一つの方法を紹介してくれた。周りに人がいると結果に影響することがあるため、自分一人でやってみてほしい。

A4の紙の上に、3分間で、思いついた人の名前をたくさん書く。そのうえで、好意的に思う人の名前の上には「〇」、好意的に思わない人の名前の上には「×」を付ける。そのうえで、それぞれ「なぜそう思うのか」という理由を考えてみよう。すると、その理由とともに、いくつかのエピソードが思いつくはずだ。

 

例えば30人の名前を書くことができたとしたら、自分自身の価値観を表す30人分のエピソードを思いつくことになる。身近なエピソードから、共通する自分自身の価値観を見つけることができるのだ。

 

「志望している」とは

志望している状態とは、企業のことを「言葉にできる状態」だと福重氏は語る。そして、企業についてステージ0から3までの4段階で理解を深め、最終的にそれぞれを言語化できることを目標にしていくべきだと語った。

取材より作成

ステージ0とはその企業の知名度の高さによって「存在を知っている」状態。就活を始めた当時はこの状態の人が多いだろう。この時点では自分が既に持っている知識のみで企業や業界を判断することになってしまう。

 

次に、ステージ1とは「各企業のビジネスの仕方」を理解すること。その企業が誰に対して、どのような商品・サービスを提供しているのかを知ることである。

 

続いて、ステージ2は「各企業内の部署、職種」を理解すること。

 

そして、ステージ3は「日々の仕事」を理解することだ。実際の業務を知ることがこれに当たる。しかし、ステージ1と2を理解していてこそ、ステージ3が有意義になるため、それぞれの理解を計画的に深めていくことが重要だ。福重氏はこのステージ1~3をすべて言語化できてこそ、「運」と「縁」の話の領域に達すると語った。

 

合同説明会の利用法

合同説明会では20~30分の短い時間で、各企業の概要について、つまりステージ1までを知ることができる。

 

会社別説明会に参加するのは、時間もコストもかかるため、合同説明会で早めにどの企業や業界が面白そうかを知ることがお勧めだそうだ。そのうえで「興味を持った企業があれば、各企業が開催する個別説明会やインターンに参加してみてほしい」と福重氏は語った。

 

業界・企業選びの進め方

第一志望の企業がある人でもそのほかの企業選びでは、苦戦する人もいるだろう。

 

そうした人におすすめなのが、志望度が高い企業の「横」と「縦」の関連企業を調べることだという。「横」の関連企業とは、「業界研究」で知ることができる競合他社だ。また「縦」の関連企業については、その企業が「どの企業からお金を入れているか」、また「どの企業にお金を支払っているか」を考えてみよう。つまり、入社してから顧客になる企業や仕入れ先、協業先を指す。

 

例えば、大手食品メーカーを志望している人がいるとする。「横」の関連企業とは、同業のライバル企業だ。その一方で、「縦」の関連企業とは、その会社の製品を仲介販売する食品商社が顧客、パッケージを作成する広告代理店・印刷会社などは協業先や仕入れ先に該当する。

 

志望度の高い企業から調べ始めることで、入社してから付き合うかも知れない多様な企業を知ることもできる。企業探しに困ったら、ぜひこの方法を活用してほしい。

 

就活をするうえで、大事にすべきこと

福重氏は、就活で多くの情報に接する中で、「誰から発信された情報であるか」に注目することが大事だと語る。説明会に参加する際にも「主観的真実」と「客観的事実」とを区別して聞くことが大切だという。

 

語った当事者にとっては真実であっても、あくまでも個人の意見であったという「主観的真実」には特に注意が必要だ。例えば、就活系ユーチューバーや退職者がインターネット上に書き込んだ内容は鵜呑みにしないようにしたい。

一方、「客観的事実」とは、その企業が誰にどんなサービスを展開しているのかなど誰から見ても同じ情報である。こうした情報を得る目的で説明会に行き、そこから漏れている情報を適宜、社員に質問するのがお勧めだそうだ。

 

説明会などに参加する際には、語られている情報が先述したどのステージに当てはまるのかに十分気をつけて聞いてみてほしい。

 

インターンへの参加

今月以降、応募する人が増える夏季インターン。参加企業数など悩みは尽きないだろう。

 

福重氏は「人によって確保できる時間が異なるため、一概に参加企業数などを勧めることはできない。また、興味のない業界までやたらとたくさん応募することや、説明会に参加せず、いきなりインターンに参加することはお勧めしない」と語った。

しかし、インターンは、興味を持った企業のより深い情報を得るにはとても意味があるという。利用法について見極めていく必要がありそうだ。

 

これから始まる就活。社会人へと進むうえで重要な分岐点だ。自分自身と向き合い、次なる一歩を歩んでいきたい。