荷風・瀧太郎の時代振り返る

12月14日に三田演説館で、第689回三田演説会が開催された。「荷風・瀧太郎の『三田文学』―明年『三田文学』創刊百年を迎えるにあたって―」をテーマに、作家・三田文学会理事長の坂上弘氏が講演を行った。
「三田文学」は1910年に創刊され、義塾内外から数多くの逸材を輩出してきた。一方で文芸雑誌をとりまく出版事情は厳しく、休刊と復刊を繰り返しつつも、2010年には創刊から100年を迎える。
坂上氏は、「三田文学」創刊100年を記念し、創刊から現在にいたるまで受け継がれている「三田文学」の土壌について語った。講演冒頭で創刊の経緯に触れた後、創刊に携わった永井荷風や創刊1年後に学生作家として登場した水上瀧太郎のエピソードを紹介。
創刊当時から「三田文学」の方針であった独立採算制や、新たな才能の発掘・育成の場として開かれた公器の精神は、荷風や瀧太郎によって受け継がれてきたことを指摘した。
会場には塾員・塾生のほか「三田文学」にゆかりのある人が多く訪れ、演説館はほぼ満席となった。自らが「三田文学」に投稿した経験も織り交ぜた坂上氏の講演に、メモを取りながら聞き入る人々の姿も見られた。