2011年3月11日に発生した東日本大震災からまもなく10年が経過する。日本は様々な災害のリスクがある災害大国だ。地震学者で慶應義塾大学環境情報学部准教授の大木聖子先生に、防災について聞いた。

 

震災からの10年を振り返って

2008年6月、小学生に授業を行う大木准教授(写真=提供)

 

震災発生前より、大木先生は、科学者と社会のインターフェースとして、地震科学の研究成果を発信してきた。震災当時、街を襲う津波をテレビの前で見ながら、本当にこれを想定して、人に地震の話をしてきたのかと大きな責任を感じていたという。

 

東日本大震災を機に、防災教育への関心が高まった。大木先生は、防災教育の位置づけについて、「震災以前、防災教育は必要性が理解されず、頼んでも協力してもらえなかった。震災後、急激に防災教育が重要な位置づけになったことは良いことだと思う」と語る。

 

学校での防災教育が進む一方で、学校以外の場所での防災が進まない点が課題だ。

「例えばごみの分別は私が小学校の頃に始まった。学校にごみ箱が2個できたことで、子どもが『何で家にはごみ箱が2個ないの?何でこれとこれを一緒に捨てているの?』と疑問を抱くようになり、瞬く間に文化として定着した。ごみの分別同様、防災も学校教育から家庭への広がりが目指される。だが、震災から10年経っても、防災意識の向上の機会は、主に学校だけなのが現状だ。家庭も含むあらゆる場所での防災文化の定着に向けた道のりの半分も来ていない」と、防災意識を学校から家庭へと広めることの難しさを語る。

 

2018年6月には、防災イベントに取り組んだ。(写真=提供)

備えが地震被害を解決する

首都圏で地震が起こった場合、政府が発表した想定では、最大2万3000人が死亡、建物倒壊が17万棟、火災による被害が41万棟に及ぶとされる。停電や断水、交通インフラの麻痺も懸念される。

 

「地震の被害の多くは建物による。でもこれは技術的に解決できる」と大木先生は語る。日本では耐震性のある建物を建てる技術の法整備もなされている。

阪神・淡路大震災では,犠牲者の死因の88%は家屋や家具による圧死で、残りの12%のうちの10%が火災だ。家の倒壊と家具の転倒を防げれば、初期消火をして火災も防ぐことができる。残りの2%は、避難途中や避難後に死亡した者で、その死因が災害に関連していると認められる災害関連死だ。その原因として、避難所の寒さや、人工透析などの生命維持に必要な医療が受けられないことが挙げられる。災害関連死は、十分な備蓄をしておいたり、家屋の倒壊を防ぐことで、道路を救急車などの緊急車両が通行できるようにしたりすることで解決する。「家を補強して、家具を固定するだけで被害は軽減できる。昔は地震で人が亡くなってたの?と子供世代に言わせることも可能だ」と防災の意義を語る。

 

塾生ができる防災

2019年3月、学生たちと共に、東日本大震災の被災地を訪れた。(写真=提供)

「防災行動は気持ちよく」というのが大木先生の考えだ。「実際に防災行動を起こした家庭を調査すると、『久しぶりに子どもといろいろなことができた。それが防災対策だった』と話してくれた。防災は、未来のマイナスをゼロにしかできない。倒れるというマイナスがゼロで収まっただけに思えるかもしれないが、その行為をすること自体が、今、プラスになる」

 

プラスを見つけて防災行動を起こす。防災を目的ではなく手段にすることが大事だ。突っ張り棒をつける・水を買うなどはじめの一歩はなんでもよい。今日から、家の防災対策を始めてみてはいかがだろうか。

 

高橋明日香

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