新年度が始まり、新たな仕事や挑戦への意欲に満ち溢れているという人も多いだろう。「これから一生懸命に頑張ろう」という意思を持つのは、とても大切なことだ。

だが、突然やる気や意欲をなくす、いわゆる“燃え尽き症候群”になってしまう人がいるのを、皆さんはご存知だろうか。そして、これは社会人だけではなく、大学生にも当てはまることだ。

燃え尽き症候群とはどんなものなのか、そしてその発症原因や対策方法はあるのか。燃え尽き症候群について詳しい、同志社大学政策学部の久保真人教授に話を聞いた。

 

“不完全燃焼”の燃え尽き症候群

同志社大学政策学部 久保真人教授

――まずは、燃え尽き症候群について教えてください。

燃え尽き症候群と聞くと、多くの人は“燃え尽き”という言葉のイメージに引っ張られて「スポーツ選手が最後までやり切って引退するときのような、何かを達成した後の清々しいもの」を想像するかもしれません。ですが、社会で問題になっているのは、むしろ「燃えたいのに燃えられなかった」という、いわば不完全燃焼が原因で精神面に悪影響を及ぼしてしまう燃え尽き症候群です。

分かりやすく言うと、燃え尽き症候群は“失恋”に似ています。失恋を「好きな相手を想って尽くし続けたにもかかわらず、見返り(相手に振り向いてもらうなど)がないまま燃えきれずに終わってしまうこと」だとすると、燃え尽き症候群の場合には、「好きな相手」を「仕事やモノ」と言い換えることができるでしょう。仕事やモノに対して熱心に取り組んできたにもかかわらず、自分の理想とは違う結果になった場合、対象への興味や関心を失い、“燃え尽き”の状態に陥ってしまうわけです。

 

発症しやすい人/環境とは

――燃え尽き症候群には、発症しやすい人や環境はあるのでしょうか?

発症しやすい人は、一途で真面目、理想や期待を高く持ちがちな性格の人です。1つの対象(仕事やモノなど)に熱中しやすく、その対象に大きな理想や期待を抱き、その他の選択肢を持ち合わせていなかったりするのです。もし思い通りの結果にならなかった場合に、そうした人は大きな失望感を味わってしまうことがあります。

また、発症しやすい環境としては、努力の成果や評価の結果が見えにくく、頑張った成果が感じられないといった環境が当てはまります。

具体例を挙げましょう。ある1人の教員が、生徒の「先生、面白くないよ」という一言で、教室にいること自体に耐えられなくなってしまうというケースがありました。もちろん、背景にはさまざまなストレスがあったのだと思います。ですが、教員という職業は、自分の授業を生徒・周りの教員がどれだけ評価してくれるかが見えにくく、正解も存在しないため、不確定要素が大きいと言えます。自分自身の思いが遂げられないことを悟り、教員という職に対して、そして自分自身に対しても、関心を失うという状態に陥ってしまったのです。

ちなみに、こうした症状は「人を対象としたサービス」を職としている人によく見られます。分かりやすい形で評価されることが少なく、具体的な正解も存在しない場合があるからだと思われます。人を相手とする仕事は、不確定要素が大きく、自分が一生懸命やっていても、手ごたえを感じにくいということがあります。それが結果として、燃え尽き症候群に繋がってしまうのです。