大学生と燃え尽き症候群

――ここからは、大学生に焦点を当てていきたいと思います。大学生が燃え尽き症候群になってしまう要因や環境として、どんなことが考えられますか?

まず、大学生が学ぶ環境は、燃え尽き症候群になりやすい環境だと言えます。

中学や高校の頃は、勉強した結果が、模試の偏差値や順位という目に見える形で現れるので、自分が頑張ったことを確認しやすいと思います。ですが、大学にはそういった指標が存在しないので、勉強した結果が見えにくい。また、勉強を頑張っても必ず良いことがあるとは限りません。先ほども話しましたが、努力の成果や評価の結果が見えにくい環境では、燃え尽き症候群になりやすいのです。

また、大学生の燃え尽き症候群と言えば、志望校に合格するという大きな目標を達成してしまい、大学に入学してから目標を失ってしまうことが要因だと考える人が多いと思います。ですが、燃え尽きの定義を考えると、大学(生活)に対して過度な期待や憧れを持っていた学生が、何らかの形でその期待や憧れを裏切られて、失望してしまうという過程で発症する場合のみに限定して考えるべきですね。

 

――現在は新型コロナウイルスの流行で、多くの大学でオンライン中心の授業が続いています。こうした状況も、大学生が燃え尽き症候群になってしまう要因になっているのでしょうか?

もちろん要因としては考えられます。キャンパスライフへの強い憧れを持っていた学生にとっては、大学に対して幻滅してしまっている状況です。そういう意味で言うと、キャンパスに対する期待が裏切られてしまうということが、多くの大学生のなかで起こっているのでしょう。コロナ禍が、燃え尽きを加速させる要因として機能してしまっていると言えるかもしれません。

 

大学生が“燃え尽きない”ために

――大学生が燃え尽き症候群にならないためには、どんなことを心がければよいと考えますか?

コロナ禍でオンライン授業が続いているこの状況は、誰にとっても望ましい状況ではありません。ですが、こうした状況に、自分なりにポジティブな意味を見つけようと考えてみることが大切です。

また、オンライン授業になって失ってしまったものを、別のことで埋め合わせようと努力できる大学生は、燃え尽き症候群には無縁と言えます。オンライン授業で大量の授業や課題に追われることもあると思いますが、あんまり深く考えず、適当に、自分のなかで手抜きするということも必要です。オンライン授業や学校関連の物事にあまり真剣になりすぎず、ときには適当にやってみて、その余力を別のことに振り向けてみてはどうでしょうか。

 

――力を抜いてみることも大切なんですね。もし、燃え尽き症候群になってしまったと思ったら、どうすればよいのでしょうか?

先ほど、サービス業は燃え尽き症候群がよく見られる職業である、と話しました。そういった業界で長年優れた仕事をしている人のなかには、実は過去に燃え尽き症候群になった経験があるという人もいるんです。こうした人は、自分の仕事や職務に対して自分の理想が通じなかったとき、仕事と自分のことのバランスを組み替え、仕事と自分を切り分けて考えるというバランス感覚を養うことで、燃え尽きの状態から脱することができています。燃え尽きから学び、再び優れたサービスを提供できるようになったというわけですね。

大学生の場合には、大学に対して燃え尽きてしまう。つまり、大学に行かなくなったり、授業を受ける(見る)のがストレスになったりすると思います。

こうしたときには、適度に距離を置いてみることが必要です。大学のことを考えずに済むようなことをしながら、自分と大学との関係を見直すことで、大学を嫌いにならずに済むと思います。冒頭で話した失恋に当てはめれば、失恋した相手と、今度は友達という少し距離を置いた形で関係を持ち続けるという感じですね。

とにかく、適度に大学から意識をそらすことができるような、何か別のことに目を向けてみてほしいなと思います。

 

(小山田佑平)