《喊声》2019年9月

9月も半ばだというのに、真夏のような日が続く。スーパーには秋の味覚が並びはじめ、一足先に秋が訪れているようだ。
「生産者の顔が見える」野菜を提供する農家が増えている。イトーヨーカ堂では、「顔が見える食品。」というオリジナルブランドを展開し、パッケージに生産者の名前や顔を表示している。また、産地状況や生産者のこだわりなど細かな情報も公開する。生産者はより良い物を作る責任を持ち、消費者は安心して購入できる。
今年の7月に起きた京都アニメーション放火事件。35人の尊い命が奪われた。事件発生から40日後、京都府警によって全被害者の身元が公表された。これを受け、報道機関は実名を報じた。被害者の遺族の一部や京都アニメーションは、公表を拒否する意向を示していたことから、一連の報道に対し非難の声が上がった。
氏名とともに「おことわり」を掲載し、実名報道の意義や方針を述べる報道機関も見られた。各社で共通しているのは、正確な事実、事件を共有し社会全体の教訓とするために必要だということである。このような使命を全うするために、プライバシーや遺族感情に配慮しながら、実名報道の原則を維持してきた。だが、世間とマスコミとの間で意識の乖離が感じられる。
「名前が見える」情報は、正確性が担保された形で受け取られる。しかし、一度ネット上に出た情報は独り歩きを続ける。報道機関だけでなく、私たちにもモラルが問われるだろう。二次被害に発展させないためにも、技術や社会が変化するように、報道のあり方も見直していく必要があるのではないだろうか。
(石嶺まなか)