普段私たちがミュージカルを観劇する際、演者や衣装、曲に目がいきがちである。しかし、実際は舞台の大道具から照明、音響など多岐にわたる部門が結集して、一つのミュージカルが出来上がっているのだ。

慶大最大のミュージカルサークル『STEPS Musical Company』(以下STEPS)の代表、西尾創一郎さん(経3)に、その魅力を聞いた。

STEPSは年6回の公演を全て学生だけで運営している。「見てくれるお客さんの心に届くように、そして何かメッセージが伝わってくれるように、作品を作り上げています」ミュージカルはほかの演劇と違い、音楽による迫力や、音楽とダンス、演技の融合によって表現される。音楽があるからこそ、作品の表現方法を常に意識していると西尾さんは語る。

では、一つの公演はどのように出来上がっていくのだろうか。
「準備期間は半年、作品の構想期間も合わせると1年ほどかかります。舞台のセットだけでなく、曲調や踊りの人数なども細かく決めて、一つ一つ仕上げていきます」

音楽の伝わり方によって、メッセージの伝わり方は大きく変わる。作品の世界観が崩れないように気をつけながらメロディー作りに励む。公演前も、照明の調整や会場のスピーカーに合わせた曲の編集など、たくさんの綿密な準備に追われるという。

学生だけで公演を作り上げることによる魅力とは何か。それは作品に込められた一人ひとりの熱意だと西尾さんは話す。
「オリジナルの作品なので、それぞれの人物像を役者自身が描きながら演じている。ここから生まれる熱量は自分たちにしか出せないと考えています」

また、照明や舞台美術などのスタッフワークも学生のみで行っている。だからこそ、一人一人の小さなこだわりが積み重なり、お客さんに伝わる熱意となっていくのだろう。

西尾さん自身、ミュージカルは大学に入学してから観劇するようになったという。音楽によって生まれるストーリーとの親和性、伝わるメッセージに強く惹かれていった。

「音楽でしか伝えられない世界観の表現や興奮が曲ごとにあり、一曲一曲がこだわり抜かれて作られています。ミュージカルを観たことがない人は、まずは「音楽における感動を体験しに行く」くらいの感覚で楽しんでみるのがよいと思います 」

(山田安希子)