【ART COLUMN】 映画『イエロー・サブマリン』(1968)

「ヘイ・ジュード」や「ハロー・グッドバイ」。誰しも一度はどこかで耳にしたことがあるだろう。英国のロックバンド、ビートルズの名曲だ。彼らのデビューから50年以上経った今ですら、その人気は衰えない。そんな彼らの名曲「イエロー・サブマリン」(1‌9‌6‌8)がタイトルとなったアニメーション映画があるのをご存じだろうか。

物語の舞台は海の底にある国ペッパー・ランド。そこでは人々が音楽を楽しみながら平和に暮らしている。しかしある日、音楽を毛嫌いする青い怪物、ブルー・ミーニーズたちが国を襲撃する。人々は石に変えられ、音楽は奪われ、平和な国は危機を迎える。そんなペッパー・ランドから助けを求められたビートルズの4人は国に平和を取り戻すべく、黄色い潜水艦「イエロー・サブマリン」に乗り、不思議な世界で冒険の旅を繰り広げていく。

まず、この映画を観て驚かされるのはその芸術性の高さだ。色鮮やかなポップアートで描かれた世界では、青い小太りの鬼や、仮面をつけたような何とも形容しがたい不思議な生き物に想像力を刺激される。そして絵と写真を融合させたアニメーションは、今なお新鮮である。また、それぞれのビートルズの曲ごとに、曲の世界観に合わせたアニメが描かれている。曲ごとに全く異なる世界が表現されていて、見る者を決して飽きさせない。まさにそれは、一つの映画の中にいくつもの動く短い絵本があり、場面、場面で違う絵本の中にジャンプするような感覚だ。絶えず変化する映像が、いつの間にか私たちを想像の世界へ誘ってしまう。

映像もさることながら、やはり一番楽しんでほしいのは映画の中に登場するビートルズの音楽だ。「ヘルプ!」や「オール・ユー・ニード・イズ・ラブ」のようなお馴染みの曲はもちろん、映画の中で登場する様々なテイストの曲を是非楽しんでいただきたい。特に、孤独なエセ知識人ジェレミーが登場するシーンで流れる「ノーホェア・マン」は、生きていく上で誰しもが感じうる孤独や虚無感に焦らず、心配するな、と優しいメロディーに乗せて助言をしてくれる。何かと多忙な現代の私たちの心にも強く響く曲だ。

映像や音楽だけでも、十分楽しめるこの映画だが、実は物語全体には当時の世の中を反映するような愛と平和、反戦へのメッセージが込められている。キャラクターやストーリーに散りばめられた色々なメッセージを、今を生きる私たちが拾い集めてみるのも面白いかもしれない。

ビートルズなんて古臭くて取っつきにくい?そんなことを、この映画を観た後にまだ言えるだろうか。
(友部祥代)