りゅうご圧縮2009年、弱冠12歳にしてショートフィルム「やぎの散歩」のメガホンをとって以来、国内外から注目を集める仲村颯悟さん。今回は沖縄が生んだこの若き映画監督の素顔に迫る。

仲村さんが映像作品を作りはじめたのは小学校3年生の頃。学校行事ぐらいにしか使われていなかった自宅のビデオカメラを持ち出して友人と撮影をはじめたのがきっかけだ。

遊びからはじまった作品作りは物語を考えたり、上映会をしたりと少しずつ本格的なものとなっていった。

転機がおとずれたのは、中学校1年生の時。沖縄県が主催した観光ドラマコンペティションに応募した自身の脚本が採用され、プロと共に作品を作ることになった。

ここから生まれた「やぎの散歩」は沖縄の祝いの席で食されるやぎを中心に展開される10分ほどの作品だ。公開とともに世界から注目を集め、一躍彼の名を知らしめることとなった。

その翌年には「やぎの散歩」をリメイクした映画「やぎの冒険」を発表する。

日本全国の映画館で上映されたほか、第3回カナダトロント新世代映画祭をはじめ、世界各国の映画祭に招待をうけた。

現在は沖縄が抱える基地問題に揺れる現地の人々をファンタジータッチで描いた映画「人魚に会える日。」の公開に向け活動している。

「普天間基地の辺野古移設への賛否ではなく、基地問題自体に目を向けて欲しい」。自らの強い思いを多くの人に伝えるため、百数十万円の制作費を自身の手で捻出し、友人とともに14人で制作にあたった。本作は来年の2月に公開を予定している。

自らの今後について「まだ映画だけをやると決めたわけではない」という仲村さん。

大学ではインドネシア語の学習に力を入れており、「沖縄の方言とインドネシア語には共通点が多い。例えばチャンプルーという言葉は、インドネシア語にもある」と、自身のルーツを探ることにも興味のベクトルを向けている。

また、今新たに関心があるのは、イベントの企画などだという。将来的になりたいと思うのは、枠にとらわれない形で「自分の思いを発信し続ける人」だ。

義塾が誇る新進気鋭の映画監督仲村颯悟さん。彼はどのような道を切り開いていくのか。これからも目が離せない。
(田島健志)