塾内で慎重な議論続ける
先月19日に「学事日程に関する懇談会」の報告のまとめが評議員会に提出された。懇談会は4月に新塾長を選出して発足する執行部に、今回の報告書を参考に秋入学を含む学事日程について決定するよう要請している。昨年1月に東大が具体的な秋入学への全面移行方針を打ち出してから1年以上経過したが、慶大はあくまで自主的な立場でこの問題について学内での具体的な議論を続ける。  (安田麻里子)

新執行部に検討要請
東大は当初から積極的に全学で4月から9月に入学時期を移す考えだが、それ以外の大学では秋入学への全面移行が、必ずしも多数意見になっていない。先陣を切る東大でも、学内での正式な決定は現時点でなされていないと報じられている。
昨年4月、幣紙の取材に対し清家塾長は東大の改革の試みを評価し、すでに秋入学を一部実施している義塾としても「学生にとって最適な教育の形」を模索する考えを示した。秋入学のみにこだわらず質の高い教育の実現や、国際化を含め各学部でより多様な教育を行うことを目指していく。そのため学事日程のあり方を検討することとし、昨年3月には学部長レベルの「学事日程に関する懇談会」が設けられた。懇談会は6回開催され、塾長や担当理事を交えての活発な意見交換や具体的な学事日程案の提出がなされた。3月には現時点での基本合意事項を含む報告書の内容が承認され、19日には慶大の最高議決機関である評議員会に報告された。
今回の報告書は懇談会一同が、塾長に提出したものである。4月の塾長選挙後まもなく、現執行部は4年間の任期を終了する。次の塾長及び執行部はこの報告書を参考にして学内の正式機関でさらなる討議を行い、義塾としての決定を行うことが要請されている。
懇談会での討議では、「学事日程は変えず、むしろ一つひとつのプログラムの充実に力をいれるべし」「クォーター制や集中講義、夏季休校中の国際的なサマースクールなどを可能にする学事日程の見直しをすべし」といったさまざまな意見が各学部から寄せられた。これらをもとに、2・3年次の希望者は6月の初めから留学できるといった案や、週1回の授業を週2回にすることで授業期間を半分にするといった案を含むいくつかの学事日程案を併記して報告書がまとめられた。
一方で阿川尚之常任理事は、「大学の制度は一見古臭いように感じるかもしれないが、それなりの理由があってのこと。よりよい教育の提供に必要な制度変更は大胆に行わねばならないが、同時にこれまでの制度の優れた点を壊すのではなく、さらに進化させるという観点に立ちつつ慎重にやらなくてはいけない」と述べた。基本的な学事日程の枠組みを決定し、各学部それぞれ特徴ある多様な教育を提供できるようにすることが学事日程見直しの目的。多様な教育の実現には、留学をはじめ、国際的なプログラムの更なる充実も含まれると阿川理事は強調した。
学事日程見直しの論点を整理し、基本合意事項と具体的な案を提示した今回の報告書を参考としながら、学事日程の大枠を決める議論がなされるだろう。来年度以降の進展が期待される。