塾生新聞では、12月10日から22日までの2週間にかけて、三田・日吉・SFCの3キャンパスの塾生約300人に対し「塾生の格差意識調査」というテーマのアンケートを実施した。アンケートの質問内容及び結果は表の通りである。

 一般に、慶應ボーイといえば「お金持ち」のイメージがあることから、「現在の生活水準」の質問の回答では、当初「上」や「中の上」が圧倒的に多くなるのではないかと思われたが、今回の調査で「上」と答えたのは全体の4・6%と、予想を下回る数字となった。しかし、「上」と「中の上」を合計すると約30%であり、一般の国民を対象とした内閣府の調査では12%であることと比較すると、やはり塾生の生活水準の高さがうかがえる。また、「中の下」と「下」を合計して30%弱、「中の中」が約40%と、三者が比較的拮抗しており、慶應内は「格差社会」と無縁であると言えるだろう。

 「求める年収はいくらか」という質問に関して、得られた回答をもとに、各選択肢の階級値によってサンプル全体、及び学部ごとに平均を割り出してみた。全体の平均は1076・3万円と、予想を上回る額が算出された。やはり生活水準の高さが影響しているのであろう。

 しかし、さらに興味深いのは学部ごとの平均である。一番高かった商学部では1260・9万円、一番低かった環境情報学部では936・3万円であり、その差は実に300万円以上に上る。日頃からお金の流れについて学んでいる商学部生や経済学部生は、自ずと高い年収を求めるようになる一方で、SFCの自由な雰囲気に触れていると、「高い年収よりも自分のやりたい仕事をやる」というような意識を持つのだろうか。

仕事や生活に「自分らしさ」求める傾向

 「どの程度仕事をしたいか」という質問の回答で、「人並み以上に仕事がしたい」、「どちらかというと人並み以上に仕事がしたい」の2つを合計すると約65%になる。これは20歳代の正社員として働いている人々と同様、もしくはそれを上回る数字である。塾生は現在高い水準の生活を営んでいながらも、なお上昇志向が強いと言えるのかもしれない。

 最後の「仕事や生活に「自分らしさ」を求めたいか」という質問では、圧倒的に「求めたい」という回答が多かった。しかし、多くのフリーターが、自分がフリーターであることを説明する際に、「自分らしい仕事がしたいから」と言うように、「自分らしさ」を求める傾向が強いのは「下」に近い人々だと言われてきた。ところが今日では、「自分らしさ」は必ずしも「下」の人々のみが求めるものではなく、「上」に近い人々も求めるものだということがわかる。

 今回の調査結果を通じて、塾生が世間で言われるほど「上」ではないことが示せたのではないだろうか。これをきっかけに、国内外で議論されている格差問題に今一度目を向けることが望まれる。

(渡邊弘樹)

アンケート内容
1.あなたの現在の生活水準はどの程度だと思いますか?
(上図参照)

2.あなたが求める年収はいくらですか?
1.200万円未満 0.35%
2.200〜 399万円 2.11%
3.400〜599万円 8.07%
4.600〜 799万円 11.23%
5.800〜999万円 15.09%
6.1000〜1199万円 26.67%
7.1200〜1399万円 7.72%
8.1400万円以上 29.12%

3.卒業後に就職するとして、どの程度仕事をしたいと思い ますか?
1.人並み以上に仕事をしたい    29.47%
2.どちらかというと人並み以上に仕事をしたい  35.44%
3.人並みに仕事をしたい    20.00%
4.どちらかというと人並みより仕事をしたくない 7.72%
5.仕事をしたくない    5.61%
6.その他    2.11%

4.どのような仕事をしたいと思いますか?
 (上図参照)

5.仕事で頑張れば、いつか報われると思いますか?
1.報われる 50.53% 2.どちらともいえない 41.75%
3.報われない 8.07%

6.生活や仕事に「自分らしさ」を求めたいと思いますか?
1.求めたい 71.93% 2.どちらともいえない 24.91%
3.求めたくない 3.51%