教授に訊く 学生時代の旅

鈴木正崇教授

「夏休み」と聞くと、まだまだ先の事と思う人がほとんどだろう。しかし、夏に旅行に行きたいと考えている人はそろそろ計画を練り始めてもよい頃だ。時間のある学生時代だからこそ、休みがあれば行ってみたい旅。自身も大学生の頃にユーラシア大陸を旅行された経験を持つ、文学部の鈴木正崇教授に話を伺った。
「人生を変えたのは1971年のユーラシア放浪の旅でした。当時は大学4年生。横浜から船でソ連へ渡り、ヨーロッパ経由でアジアに向かいました」。モスクワからウィーンへ。そして、ミュンヘンで買った中古車でトルコへ向かい、シルクロードを辿り、イラン、アフガニスタン、パキスタン、インドへ。更に、ネパール、タイへとアジアを巡った。特に砂漠での遊牧民との出会いは忘れられないと話す。自分たちとは余りにも違う人々との遭遇はまさに「異文化との出会い」であり、衝撃的だったそうだ。
旅の魅力は「自分の世界を広げることができること」だという。「旅に行くと、物事に寛容になれる。学生は時間も体力もあるし、物事を柔軟に考えられる時期。旅で色んなことを経験して、一回自分というものを壊してみることで初めて、自分の生きてきた文化が理解できるようになる」。また、旅に出た時には自分独自の感動を見つけ、素直に驚いてほしい、という。
旅では綺麗な景色を見るのもいいが、最終的に残るのは「現地の人と話した記憶」であるという。「その土地の人々と話してみると、彼らが思いもよらないことを考えていることがある」。地元の人が話す言葉がわかれば考え方が理解でき、世界が広がる。海外旅行に行く時にはやはり語学が大事である、という。
実際に旅に行くとなると、学生にはお金の問題が絡んでくる。「アルバイトで稼ぐ、親から借りる、それだけでなく、情報を収集し旅にかかるお金を安くする工夫が大切」だそうだ。宿泊費や交通費を事前に調べて計画を立てるだけでなく、現地で出会った人から情報を聞いて生かすことが重要だという。リスクもあるが民宿が理想的だと語る。
では、慶應の学生たちに勧めたい旅行先とは。「外国ではインド。衣食住、遺跡や聖地、祭り、人間との出会いなど刺激に満ちていて毎日新しい発見があります。そして、バリ島(インドネシア)。中でもガルンガンからクニンガンの祭りの時期がお勧めです(2012年の夏は8月29日から9月8日)。人を楽しませる演出が素晴らしい。宿泊地は海辺のリゾートではなく棚田の広がるウブドの民宿がよい」
「日本でお勧めしたい場所は、湧水の美しい山形県の遊佐町」。サケが遡上する月光川が流れ、海辺でとれるカキは絶品。美しくそびえる鳥海山も見どころである。山は神仏の顕れとされ、生命の充ち溢れる自然が広がる。最近では映画「おくりびと」(2008年)の舞台になった。
最後に、「旅に出るときは好奇心を忘れないでほしい。好奇心があれば、どこに行っても楽しむことができる。」と語ってくれた。
自分のために多くの時間が使えるのは、大学生が最後である。長期休み、十分に準備をして旅に出てみてはいかがだろうか。        (廣田珠里)