アメリカ大統領のジョー・バイデン氏も吃音だったことが話題となった。吃音は、言語障害の一つだ。日本人の1%が悩んでいるにもかかわらず、吃音の認知度は高くない。そこで金沢大学の小林宏明教授に、吃音について聞いた。

吃音とは

吃音の主な要素は三つある。「わ、わ、わたし」というような繰り返しと、「わーたし」というような引き伸ばし、言葉が詰まって出てこない阻止だ。
吃音の問題の大きさは、重症度だけでは決まらない。同程度の吃音を持つ人でも、周囲の反応や、本人がどのくらい気にしているかなどによって、困難度が異なる。吃音がどのくらい出るかと同時に、どれくらい困っているかも合わせて評価する必要がある。

吃音が出やすい場面も、人によってさまざまだ。一般的に、歌ったり、他の人と声を合わせたりする場合には、吃音が出にくい。一方で、人前で話すときや、言い換えられない決まった言葉を言う場面では言葉に詰まる人が多いという。

吃音は緊張ではない

吃音の症状、または困難度にアプローチする方法は、主に3つだ。1つ目は、話し方をコントロールする方法だ。発話の速さや、口や喉に力が入っていることが吃音の原因となっている場合、吃音が出にくい話し方をマスターする。

2つ目は環境に働きかけ、合理的配慮を求める方法だ。実際に、学校での号令の言葉を変えるなどの配慮が行われている。

3つ目は、心理面に働きかける、認知行動療法だ。「吃音を気にしなくてよい」と不安を軽減させることで、困難度を和らげる。マインドフルネスを通じて、話すときに心を穏やかにする方法も有効性がある。

吃音を持つ人に対し、「リラックスしてね」や、「私も噛むことあるから大丈夫」というような声かけは、響かないことが多い。緊張したり慌てたりしているから言葉に詰まる現象、いわゆる「噛む」こととは似て非なるものが吃音なのだ。話し方自体には全く触れず、話している内容に注目することが一番の心遣いだ。

吃音を持つ子どもたちの支援

小林教授は、小中高生を対象とした研究に多く携わるとともに、吃音を持つ子どもたちの支援もしている。吃音を持つ人の年齢によって、必要な支援は異なる。小学校低学年までは自分が吃音であることを気にしていないことが多く、派手に吃音が出やすい。この時期の主な支援対象は保護者であり、育て方が原因ではないのだ、吃音が出ても困らないようにしていこうと伝える必要がある。

多くの吃音のある子どもは小学校低学年を過ぎると自らの吃音を気にしはじめる。そうしたら、本人が何を望み、何を望まないのかを聞き、希望に沿った支援を展開していく必要がある。吃音を持つ人は、吃音を隠そうとすることが多いため、どのような面で困っているのかが分かりづらい。少し消極的だが問題なしと思える児童・生徒も、実は吃音で困っているかもしれない。

吃音を持つ人の苦難

吃音を持つ人には、さまざまな葛藤や不安がある。例えば、吃音のことをカミングアウトするかという葛藤だ。吃音を持っていることは話したことがあれば知られているので、打ち明けることでむしろ安心できた人も多い。
コロナ禍で増えたオンラインに苦戦する人もいる。対面しない方が話しやすいという人もいるが、アイコンタクトなどで話し始めたいことを相手に伝えられないことに苦労するのだ。

吃音による就労への不安も大きい。小林教授が開催する吃音を持つ中高生の集いでは、特に、就職・進路をテーマにした回が好評だった。面接でどうすればよいのかという心配や、技師などの話すことの少ない職業に就きたいという声もあった。

吃音を持つ大学生に

最後に、吃音を持つ大学生へ、小林教授からメッセージをもらった。「アルバイトやアクティブラーニング、対人関係などで、他の人が当たり前にできていることがうまくできず、つらいことが多いはずだ。しかし、自分のやりたい仕事に就いて成功している人も、結婚して幸せに暮らしている人もたくさんいる。吃音で未来の可能性は決して狭まらない。ひとりで悩まず、言語聴覚士やセルフヘルプグループの人の元を訪れ、どのように困難を乗り越えていくのか相談してみてほしい」

 

(古田明日香)