「人が本当に影響を受けるのは、どんなにすごいスーパーマンよりも隣の友人」。そう断言するのは、総合政策学部2年の小西遊馬さん。大学に通いながら、SNSを通じて多岐に渡る情報を発信する、現役ジャーナリスト兼ドキュメンタリー作家として幅広く活動している。

 

影響を与える隣人として

彼は、遠く著名な存在よりも、近くにいる知人の方が人に大きく影響を与えることができると話す。「情報を届けたい相手との距離を大切にしながら、単に映像を届けるだけでなく自分が日々成長していく姿を見せたい。そういう自分の背中を見て、若者が自分もできることはないかと自らアクションを起こす手助けになりたい

彼が、国内外問わず様々な情報を発信しようと考えるようになったきっかけは高校時代の1年間のイタリア留学だった。現地でできた一番の友人が、別れの際に難民としての辛い過去を打ち明け、助けを求めてきた。このとき初めて、自分にできることは何かということを真剣に考えるようになったという。そして彼が始めた行動は、メディアを通じて自分なりの視点から情報を発信する、ジャーナリストとしての活動だった。

 

ジャーナリストとしての熱意

以前小西さんはロヒンギャで起こった大量虐殺に焦点をおいたドキュメンタリーを制作した。そこには親が目の前で殺されたりレイプされたりした人々や、苦しさから薬物に手を出す子供などが取り上げられていた。現場は、もはや想像できないくらいにむごたらしい。

普通に生活していれば、知らなくてもいい世界をどうして自ら探し求めるのか。そしてその情熱はどうして何年も冷めないのか。小西さんはこの問いに対して、「人権や社会問題について考えることももちろん大事なことだが、自分の活動のモチベーションはもっと単純だ。自分を愛し自分が後悔しないような未来を築くためだ。助けを求めている人を見て見ぬ振りをすることは許せない。そんな自分や自分の大切なひとを愛すことさえもできなくなる」と、力強く答えた。こうした彼の誠実さや真っすぐさが、個人ジャーナリストとしての信頼を築いているのだろう。過去や不都合な事実を全て隠さず話してくれる人に対して、自分自身がまず全力で真摯であろうとする姿勢は見習うべき所が多い。

 

皆が愛し、愛される世界を目指して

小西さんは西郷隆盛の「肉体的な死よりも精神的な死を最も悔やむ」という、信念のためなら死をも恐れない姿に憧れると話す。「自分も怯んだり格好つけたりして大切なものを守れない人間にはなりたくない。また、責任を持ってだれかを愛せる親という存在も尊敬できる」と話した。小西さんは、現代社会に蔓延している拱手傍観の風潮に強い警笛を鳴らしている。

今後の目標については、「皆が隣にいるだれかを思いやり、愛してあげられるような世界を目指し、今よりもっと多くの人に自分の情報発信で影響を与えていきたい」と、目を輝かせて話した。その顔には翌日から始まるインドネシアでのロケに対する熱意がみなぎっていた。

 

彼はまた今日も、苦しみや悲しみの先に見えてくる景色を求めて挑戦し続ける。自分を愛し、周りの人たちにも愛をささげ、昨日よりも美しい景色を見るために。

 

(古嶋凜子)