5月15日、福澤先生ウェーランド経済書講述記念講演会が三田演説館で開かれた。講師の前田富士男・慶大名誉教授は「モダン・デザインへの眼差し―美術史学からみる福澤諭吉」と題した講演の中で、福澤のデザインへの関心と理解について論じた。
同講演会は、1868年5月15日の戊辰戦争の渦中、福澤諭吉が日課通りウェーランド経済書の講義を続けたことに由来する。義塾では学問教育の尊重を最優先にした建学の精神を長く継承するため、5月15日を「福澤先生ウェーランド経済書講述記念日」として記念講演会を行っている。
前田氏は講演中で「國光は美術に発す」という福澤の言葉を紹介し、福澤が合理主義的に美術を捉え、乳母車や椅子などのプロダクト・デザインに関心を寄せていたことを説明した。福澤が著書で椅子作りに例えた訓戒を述べていることも引き合いに出し、福澤の芸術観を示した。
現在、前田氏は福岡市美術館で開催中の「未来をひらく福澤諭吉展」を監修している。同展覧会に出品されているアメリカ製の乳母車は洋行中の福澤が関心を寄せたものであると紹介した。
前田氏は慶大文学部教授、同大学アート・センター所長を経て、2009年4月より同大学名誉教授。