喊声

喊声 2017年7月号 幸せを求めて

夏の夜明け前、砂浜に産み落とされたウミガメの子どもたちは、孵化すると同時に月の方向へと歩き出す。その先に帰るべき海があると知っているのだ。前へ、前へと、短い手足を懸命に動かして、海を目指す。

だが最近、ウミガメに異変が起きているという。人間の生活圏に近い海辺で生まれたウミガメたちが、ネオンなどの人工の光と月の光を勘違いしてしまうことがある。彼らは街を彷徨い、車に轢かれたり猫に襲われたりして死んでしまう。月明かりよりも煌々とした強烈な光が、ウミガメを惑わすのだ。

人類は「幸福」という名の海を目指して、日夜進歩を続けてきた。頼りになる月明かりは「経済成長」。その結果、物質的な豊かさや便利な暮らしが実現された。しかし一方で、自然環境への影響を顧みることのない開発や、効率重視の競争社会に苦しめられるようにもなった。地球環境が悪化すれば人類の生命は脅かされるし、競争社会からは格差が生まれる。それでも、誰もが毎日がむしゃらに進み続けるのだ。

立ち止まって、確かめるように眼前の光を見上げてみよう。その光は、本当に本物の月明かりだろうか。「海」はどこにあるのだろうか。
(石田有紀)

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