大学教員が語る「正月」~文学部教授 山下 輝彦君

幼少時を中国で過ごし、中国の言語や文 化に深い興味を持つ。主な研究テーマは 中国語文法、方言、文字改革等、近年は インターネットによるE-learning、サイ トによる語学教育の分野にも進出。また、 中国の伝統演劇、京劇を紹介する「中国 語で歌おうー京劇編」(CD 付き)を出版、 日中文化交流の活動等にも携わっている。
幼少時を中国で過ごし、中国の言語や文 化に深い興味を持つ。主な研究テーマは 中国語文法、方言、文字改革等、近年は インターネットによるE-learning、サイ トによる語学教育の分野にも進出。また、 中国の伝統演劇、京劇を紹介する「中国 語で歌おうー京劇編」(CD 付き)を出版、 日中文化交流の活動等にも携わっている。
 私は、16歳まで中国に住んでいました。私がいたのは北方の山東省で、お正月は中国の北方人のしきたりに倣って祝っていました。

 中国では1月1日は休日ですが祝い事はせず、旧暦の正月を祝います。時期は1月の末から2月の初めで、非常に寒かった記憶がありますね。それが過ぎるとだんだん春めいてきますので、旧正月のことを春節と呼びます。

 大晦日の夜12時を過ぎ新年になると、一斉に爆竹を鳴らします。爆竹には邪気を除く意味があり、中国では祝い事の際に必ず鳴らすのです。

 春節に必ずするのは、餃子を食べること。地方に出張中の家族も家に戻ってきて、皆で餃子を作ったものでした。

 日本人が寺社へ初詣に行くように、中国では廟びょうにお参りをします。廟では縁日が開かれ、色々な食べ物が売られていたり、紙芝居が披露されたりします。

 また、祝賀の文句を赤い紙に黒字で書き、玄関の扉に貼ります。これは対つい聯れんといって、必ず対句でなければなりません。例えば「花開春富貴 竹報歳平安」というものが最も一般的で、「花開き春がきて、豊かな生活が訪れるだろう。爆竹が鳴り、今年の平安を皆に知らせている」という意味です。互いの家の対聯を批評し合いながら、町中を歩きます。

 そのほかに、年画というめでたい絵を買う風習もありますね。年画のモチーフは子供が魚を抱えているものが多いです。子供はめでたいものですし、中国語では「魚」は「余」という字と発音が同じなので、喜ばしい字なのです。

 旧暦の1月15日は元宵(げんしょう)節といって、正月の祝い事が行われるのはその日まで。元宵節には必ず餡の入った団子を食べ、パレードや提灯祭が催されます。提灯にはクイズが書いてあり、一番多いのは漢字の謎解き問題。

 例えば「人が草木の間にいる」と書いて、何と読みますか。答えは「茶」ですね。 もちろん日本のように、お年玉をあげる習慣もあります。また、私が中国にいた時代には、正月に子供に新しい服を買って着せたものでした。昔は皆貧しかったから、いつでも服を買えるわけではなく、正月のためにお金を貯めていたのです。

 文化大革命が起こり、春節のしきたりは古いとされて一時は廃止されましたが、最近はまた復活したようです。近年の新しい習慣は、日本の紅白歌合戦のようなお正月番組。放送開始から20年が経ち、2007年の調査によると、視聴者数は6億人を超えているそうです。昨年の北京オリンピックの開会式のように重厚な内容で、歌や踊り、コント、京劇などが披露されます。

 日本では旧正月を祝う風習はありませんが、春節のころに中華街に行ってみると楽しいかもしれませんね。

聞き手=田中詠美