新聞の有用性を語る萩原教授
新聞の有用性を語る萩原教授

現在、新聞の購読率が下降している。特に大学生は5割以上が新聞を読んでいないというデータもあり、新聞との関わりの希薄化が顕著だ。こうした中、新聞は今後どうあるべきなのだろうか。慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所で教鞭を執る萩原滋教授にお話を伺った。

まず、新聞の長所に関して「新聞は広くニュースをカバーしており、数においてテレビに勝る」と語る萩原氏。記事ごとに伝えたいことの軸をはっきりと設け、詳しく執筆されているため、ニュースの本質を知ることもできるそうだ。だが一方で「テレビなどと違い、リアルタイムで情報を伝達するのは不可能」と速報性の弱さを指摘した。加えて「記者のフィルターを通して伝えられるため、間接的な部分もある」と、一般に流布する新聞の客観性概念にも警鐘を鳴らす。

続けて、「新聞は購読者からお金をとっているので、情報伝達に関し非常に責任が問われる」と話す萩原氏。その責任を全うしているため、新聞は購読者との信頼関係があると指摘した。読者は判断力が欠如していても、ネットでの情報収集と異なり新聞から確実な情報を得ることができる。さらに信頼があるからこそ「時間をかけた取材で良質のニュースを伝えることが一番重要」と、新聞が生き残っていくすべを語る。

では、新聞は現代の読者からどう使われるべきなのか。萩原教授は「ほかのメディアでは伝えられない解説性や詳細性、専門性を備えている」という新聞の特色を最大限利用することを促す。

「テレビやネットで大まかな情報を得て、その情報の背景や本質を新聞から得る作業をすべき」と、一媒体からでなく複数のメディアの併用が肝要であることを説明。「発行側も速報性で対抗せずに、新聞の特色を生かしていくことが重要である」と、相互に特色について理解することの大切さにも触れた。

加えて萩原教授は、現在の大学生は情報への関心の幅が狭くなっていることを指摘し、それゆえに「現在、世間一般に皆が情報を熟知し、どんな人とも深く語りあえるような共通の話題が存在しない」と話す。「いろいろなものに関心を持つために、広くニュースを扱う新聞を読む習慣をつけることが大切。新聞をたくさん読むと習慣が身につき、ニュースを自然と理解できるようになる」とアドバイスを送った。

われわれはテレビやネットからだけではなく、新聞からも情報を得て複数のメディアを併用することが必要だ。新聞には解説性・詳細性・専門性の美点があることを覚えておかなければならない。そしてこの特徴を強化していくことは、今後の新聞の存在意義を明確にすることにつながるのではないだろうか。

(下池莉絵)