自らも楽しむことを忘れない國本さん
自らも楽しむことを忘れない國本さん

3月10日、下北沢のとあるスタジオ。そこで4時間後に控えた東京湾船上でのクルージング演奏のため、練習に打ち込むバンドグループがあった。tetra+は慶應義塾高校からの同級生5人で結成されたジャズバンドだ。
その中心として活動するのはギターを担当する國本怜さん(文2)。スタジオの1階にはギターを横にくつろぐ彼の姿があった。

初めてバンドを組んだのは高校1年生の時。「周りにロックをやっている人は沢山いたけれどジャズをやっている人はいなかった。だからジャズに魅力を感じた。他の人と違うことをしてみたくて」とバンド結成の経緯を話した。「初めは1回だけやってみようという軽い気持ち。その後イベントに出てみて次第に活動するようになったんです」




ジャズにギターとは珍しい。何故、ギターなのか。「ギターは音楽の中で様々な役割を担うことができる。メロディーだって伴奏だってできる。だからこそ、音楽のなかでのバランスや他の楽器との兼ね合いが重要です。そこが難しいところでもあり、また楽しいところでもあるんですけどね。とにかくジャズというジャンルにギターはそういないから」。とことん人と違うことを追求する彼のスタンスが垣間見えた。

昨年は、池袋でのジャズフェスティバルや他大の学園祭・卒業パーティー、月に数回のライブハウスでの演奏と活動範囲を広げてきた。そんなtetra+について國本さんは一言、「好きな時に好きな場所で好きなように演奏できるバンド」と表現する。演奏中の姿勢を伺うと、「メンバー同士のコミュニケーションをいかに取るかをいつも考えています。正直、お客さんは二の次ですね」。確かに、スタジオでのセッションも、終始笑いの絶えない和やかな雰囲気だ。自身が楽しむことを忘れない彼ら。営利を考慮せず、演奏する喜びを堪能する学生バンドならではだ。

さまざまなイベント出演のオファーのほとんどはYouTubeに流したライブ映像を見た人によるもの。ネットの影響力を彼らは身をもって感じている。また、気になるプロにはネットを使い自ら乗り込む。プロのアーティストの仕事を手伝いながら、質問と観察を繰り返し、あらゆるものを吸収するのだという。「自発的に学ぶ姿勢」。これこそ、これからの社会を担う世代に求められている姿勢にもかかわらず、現代の若者に欠如しているものだろう。彼らに見習う部分は多い。




自身の内面については、「苦手を克服するよりも長所を伸ばすことを大事にしています。好きなことはとことん追い続ける」と長所を大切にすることで弱点をカバーするという考えだ。また、「自分の興味のある分野と何でも結びつけて考えるようにしています。外国語だって勉強ではあるけれど、その土地の音楽を理解する上で重要な要素と捉えれば楽しく取り組める」と語った。

これから、海外の文化や語学、その土地の音楽に触れて自分自身の音楽を築きたいという國本さん。「バックパックで世界を旅するのもいいかも」。最後に呟いたその言葉は、彼の無限の可能性を物語っていた。

 

(清水咲菜)

國本さんの所属バンドtetra+の活動に興味がある方はhttp://tetraplus.jimdo.com/へ。