慶應義塾創立150年を記念し、慶應義塾の原点への回帰をコンセプトとした新たな教育プロジェクト、「福澤諭吉記念文明塾」が展開されることが決まった。4月26日には三田キャンパスで新福澤塾・オープニングセレモニーが行われ、多様な環境から本プロジェクトに参加する受講生たちに、新福澤塾の精神が伝えられた。

(富永真樹)

 福澤諭吉記念文明塾の一番の目的は創立150年を機に、これまでの義塾の歴史を振り返りつつ、慶應義塾の学びの原点へと立ち戻ってこれからの時代を進んでゆくことにある。つまり、文系・理系の区別にとらわれることなく、さまざまな学問を総合的に学ぶことにより、国際化の進んだ現代社会の先導者を育成するのがその狙いと言えよう。

 福澤諭吉記念文明塾は、2つの側面を併せ持つ。第一が、先導的テーマの研究機能、政策提言などのシンクタンク機能、国際シンポジウム・講演などを開催する発信機能を担う研究拠点としての側面。そして第二が、全人教育を実践し、独立自尊の精神を備えた国際的な先導者を育成する発育教育の拠点としての側面である。教育拠点に研究拠点を併設することで、知の創造(研究)、伝達(教育)、実践という連動の環の構成を試みるようだ。

 後者である教育側面に参加するのは塾生のみではない。義塾の伝統である「半学半教」の精神に基づき、国内外で活躍する塾員(義塾卒業生)、教職員を講師として招き、先輩・後輩の別なく自由闊達に意見を述べ合う場の創出を目指す。教育プログラムとしては、福澤諭吉の教えを先輩から学ぶ「導入プログラム」、国際的先導者に不可欠な基本的素養を体系的に習得する「ベーシック・プログラム」、最新のテーマについて各界の専門家から学ぶ「リーダーシップ・プログラム」の3つを用意している。これらは塾生のみならず社会人を対象とするほか、コンテンツの一部は一般公開も企画し、三田会など社中の関係組織による社会人教育プログラムなどとの連携も視野に入れ、国内外で展開する予定だという。

 オープニングセレモニーには安西祐一郎塾長、福澤武氏が出席し、福澤諭吉記念文明塾が「学び方を学ぶ場」になること、そして福澤諭吉の精神に添って「リーダーシップの土台」を形成する場になることへの期待が述べられた。対談中の質疑応答においては受講生の積極的に参加も見られ、新福澤塾への強い志を感じることができた。