慶應義塾大学出身者の2023年公認会計士試験合格者数は165名で、大学別合格者数49年連続首位である。だが、公認会計士を目指す学生の中には、大学生活との両立に不安を持つ者も多い。

そこで、今回は公認会計士を目指す塾生の公認団体である「経営会計研究会」の学生責任者を務める毛利忠春(もうりただはる)さん(経4)に公認会計士の資格と団体の活動について話を聞いた。

 

  • 公認会計士試験の概要

公認会計士試験にはマークシート形式の短答式試験である一次試験と、記述形式の論文式試験である二次試験がある。一次試験の合格者のみが二次試験に進むことができ、二次試験に合格することで公認会計士試験合格となる。

短答式試験は、財務会計論、管理会計論、企業法、監査論の4科目。論文式試験はさらに自由選択科目と租税法が追加される。どちらも難しい試験であるため突破するのは大変だ。

さらに、公認会計士の資格を取得するためには、試験合格後、実務補習所という施設で3年間勉強した後に、修了考査と呼ばれる試験に合格する必要がある。毛利さんは公認会計士試験には合格しているが、現在は修了考査に向けて勉強中だそうだ。

 

  • 大学生活と公認会計士試験の両立

大学生が公認会計士の資格を目指す場合、1年生の4、5月に予備校に入り、2年生の12月に短答式試験の合格、3年生の8月に論文式試験の合格を目指すのが一般的なようだ。また、大学生活と試験勉強の両立については、予備校と大学に通うダブルスクールもそれほど難しくはないという。「私の場合は、大学の授業時間になったらキャンパスに行って授業を受け、終わったら予備校に戻って勉強する、という形で勉強を進めていました。大学がテスト期間に入ると、予備校も講義をお休みにしてくれるなど配慮してくれるので、無理なく両立ができると思います」。実際に、毛利さんは必修が多い大学1年生の時の成績もそこまで悪くなかったそうだ。

 

  • 予備校のすすめ

合格するためには次の3つの理由から、予備校に通うことは必要だという。1つ目は教材の質の違いだ。予備校のテキストは膨大な量の知識がまとまっており、市販のテキストよりも効率が良いそうだ。2つ目は模擬試験の存在だ。予備校では月に1、2回答練と呼ばれる模擬試験を開催している。そのため、タイムリーに自分の実力や周りとの差を測ることができ、それらが勉強を進めやすくする指標になる。3つ目は年によって試験に出題されやすい論点など、個人では調べきれない傾向などの情報を教えてくれることだ。

毛利さんの予備校での勉強は、最初は余裕を持ったペースで授業が進んでいったが、次第に大変になっていった。また、1授業は3時間で、多い時期だと週に2から3回授業があるが、授業以外で復習の時間を自分で作ることが大切であるため1日の勉強時間は人によって違うという。

 

  • 簿記と公認会計士試験の関係

簿記は公認会計士試験の内容とほとんどかぶっているため、勉強の最初の段階ではかなり有利になるそうだ。ただ、簿記の知識は公認会計士試験の科目である財務会計論と管理会計論のほんの一部であり、公認会計士試験にはほかの科目もある。よって、公認会計士試験を受けるには様々なことを学ぶ必要があり、努力はかなり必要だ。

 

  • 公認会計士の様々な進路

公認会計士試験に合格した後の進路の内、最もメジャーなのは公認会計士の独占業務である監査法人と呼ばれる法人に入ることだ。多くの人は同時に実務補習所にも通い、修了考査に合格すると公認会計士になる。こうして、監査法人で公認会計士の資格を生かした仕事をまず経験する。

一方、その後の進路は人によって異なるようだ。「監査法人にずっと勤める方もいますが転職する方も多く、一般企業の経理部門やコンサルティング、M&Aの分野に進んでいく方などもいます」。様々な道が開けているのが公認会計士の魅力であると語った。

また、就活において、公認会計士は企業側からの需要も高い。「公認会計士はずっと不足していると言われています。公認会計士試験は毎年一定数しか合格者を出さないため、人員の補充が足りなくなっているそうです。そのため、企業側が公認会計士試験の合格者を欲しがっており、就活生側の希望が通りやすいと思います」。就職活動を有利に進められることも公認会計士のよいところのようだ。

 

  • 試験を受けて感じたこと

公認会計士試験に向けた勉強を進め、試験に合格してどのように感じたかを毛利さんに聞いた。

「私が大学に入学したときは新型コロナウイルスがかなり流行っており、大学の課外活動などは制約が多く、ほぼ何もできない状況でした。そうした中、何かに打ち込んでみたいと思って始めたのが公認会計士の資格を目指すことでした。サークルや部活を頑張ることと同じように、試験に向けて頑張るということが大学生活の軸となり、よい生活のサイクルができていました。また、公認会計士を目指して勉強し、その試験に合格することを通じて、社会に出る前に専門的な知識を身につけることができ、自信をつけることができたように感じます」

公認会計士試験に向けた勉強は、大学生活を充実させる意味でも、将来の選択肢を広げる意味でもよい効果をもたらしたようだ。

 

  • 切磋琢磨できる環境に

経営会計研究会の主な活動内容は、情報交換やメンバー同士の交流だ。具体的には受験生同士の仲を深める食事会などがある。また、監査法人へのオフィスツアーも行っており、実際に資格を取ってから働く場所や業務内容を体感することができる。さらに、在籍している合格者が受験生の質問に答えたり、勉強内容や勉強方法についてのアドバイスをしたりするため、勉強のサポートもできているそうだ。また、ほかの大学とも食事会を中心に交流を行っているという。

受験勉強の息抜きになったクリスマス懇親会

 

こうした活動は、試験に向けた勉強によい作用をもたらしたそうだ。「交流会があることで同じ目標に向かっている仲間と仲良くなり、ライバルとして切磋琢磨できるようになったことがよかったと思います。オフィスツアーについては、将来のビジョンが明確にイメージできるようになり、勉強のモチベーションにつながりました」

 

団体に所属している人が公認会計士試験に実際に合格するのは、大学3年や4年が多い。また、公認会計士の予備校に入ることを決めてから参加する人が多いという。ただし、全員がそうではなく最初に簿記の勉強を始めたいという段階で入会する人もいる。そのため、公認会計士を目指さなければならないという団体ではない。活動を通じて公認会計士について深く知ることができるため、まだ試験を受験するかどうか決めていない人にとっても有益な団体のようだ。

 

  • 公認会計士を目指す人へのメッセージ

「大学生活は自由な時間が多いため、周りとの差が付きやすい時期だと思います。公認会計士試験の合格を目指すことは資格や知識が手に入り、自分の成長や将来の選択肢が増えると言った分かりやすいメリットがあるため、よい目標となります。迷っている方は是非簿記などの会計に関することに触れ、興味がわいたら公認会計士試験にチャレンジしていただきたいと思います。その際、経営会計研究会に入会してくだされば、全力でサポートさせていただきたいと思います」

経営会計研究会では新歓の活動を予定しており、3月末からオンライン履修相談会、4月の新歓期間には対面での説明会やチラシの配布を行う。公認会計士について興味がある人は参加してみるとよいだろう。

 

今村太亮