大学生活に欠かせないアルバイト、就活。そこで労働問題が起きたら?本記事では、労働法に詳しい東京大学社会科学研究所の水町勇一郎教授に話を聞いた。

「労働法は日常に密接に関わる」と語る水町教授。どの学部の学生にも読んでほしい記事となっている。

 

労働法を知ることが人生の糧となる

大学生にとって労働法を学ぶことの意義は大きく2つある。1つは、「現状の問題を解決する」視点の意義だ。アルバイトをする際に、労働法の知識を活用すると、労働条件や待遇を改善するきっかけになることがある。

もう1つに、「長い人生のプランニング」という視点からの意義がある。働き方の多様化が進む現代では、従来の終身雇用以外にも、期間付きの契約や起業をするという道もある。労働法を知っていることで、その決定の参考になることも多い。

大学生が労働法を活用する、とは?

アルバイトにおける労働法の具体的な活用方法として、主に次の3つが挙げられる。①自分の労働条件の内容の確認、②労働基準法・最低賃金法など労働関係法規に違反している点がないかの確認、③セクハラ、パワハラや辞めハラなど違法な点はないかの確認だ。

就職の際には、これに加え企業のHPや厚生労働省のデータベースなどをよく見て、「働きやすい環境か」を確認することが大切だ。特に、女性活躍や離職率、平均的な労働時間、有給取得率などが確認のポイントだ。

大学生と企業の立場の差を乗り越えるために

情報力や立場が有利な企業と対等な立場に立つためのカギは、「労働法の活用」に加え、「ネットワークによる結びつき」、「自分の情報や能力を高めること」が挙げられる。

「ネットワークによる結びつき」には、大学時代からサークル活動や社会貢献活動に参加することも役に立つ。「組織の中で活動し、自分の価値や社会の利益を高める」経験ができるからだ。

「自分の情報や能力を高める」ためには、例えば学部や大学院で専門性の高い勉強をしたり、資格を取ると、企業としてもこの人にいい条件で働いて欲しいと思うようになる。

自らの信念や生き方にあった働き方を選択する

水町教授は、大学生に持ってほしい意識として「しっかり勉強してほしい」と述べる。大学での学びは専門性が高く、将来の自分や社会の役に立つという意識をもって勉強することが大切だ。

また、「長い目で企業を選んでほしい」とも言う。企業はブランドではなく、どういう人生を送りたいかという自分の信念に合った働き方を選んでほしい。その際、労働法はあなたの選択を大きく後押しするだろう。

水町勇一郎先生
東京大学 社会科学研究所教授。労働法を比較法・歴史的観点から研究。働き方改革実現会議議員など政府会議の委員等も歴任。

 

(山本唯那)