人も動物も幸せな社会に 杉本彩さんと考える動物愛護団体の問題

10月4日は世界動物の日。日本は欧米諸国に比べ、動物愛護や動物の保護という点で比較をされることが多い。さらには近年、劣悪な飼育環境や多頭飼育による飼育崩壊といった動物愛護団体のずさんな運営実態が明らかになる事例が報道でとりあげられることも少なくない。本来、動物を安全に保護すべき存在である動物愛護団体への信頼が揺らぐ今日において、私たちは動物愛護の諸問題にどう向き合うべきなのか。日本の動物愛護団体に関する課題や解決策について、公益財団法人動物環境・福祉協会Eva(通称:Eva)の理事長として動物愛護活動に長年携わる杉本彩さんに話を聞いた。

 

野放し状態の動物愛護団体

30年近く前からの個人活動に始まり、Eva設立以降は動物愛護問題の根本的解決に向けてさまざまな活動を行うなど、動物愛護活動の最前線で活躍する杉本さん。彼女はまず、日本の動物愛護団体の活動が野放し状態である点を問題視する。

日本の法律において、第1種動物取扱業(ペットショップなど営利目的の団体)の事業者は、事業所・業種ごとに登録の義務が課されている。対して、第2種動物取扱業(非営利の団体)である動物愛護団体は届け出のみで活動を始められるために、把握できないほどの数の団体が『動物愛護団体』として存在するのだ。杉本さんは、「各団体が自分たちの想いのままに活動するために、『目指すべき動物福祉の基本』といった共通認識が備わっていない」と語る。

 

問題とされる動物愛護団体の実態

保護施設の環境衛生状態の劣悪さや、ずさんな動物の管理による医療ネグレクト(動物に必要な医療を受けさせないこと)、適切とはいえない里親への譲渡方法…。さまざまな問題を抱える動物愛護団体について、杉本さんは2つの原因パターンがあると話す。

一つ目は環境エンリッチメント(動物福祉の充実した社会の実現に向け、飼育環境に対して行われる工夫)や福祉に対する知識や意識が成熟していないことで、悪気がなくネグレクト状態にしてしまうパターン。そしてもう一つが、動物の福祉の為でなく、寄付金や譲渡金目当てに活動を続けているパターンだ。

「たとえば、一部の団体においては、潤沢な寄付金や運営費があっても、それが動物の福祉のために適切に使われていないこともあります。また、ブリーダーの不要犬・猫の受け皿となって引き取り、それを保護犬・猫と詐称して高額な譲渡金を提示して商売をする、いわゆる動物愛護ビジネスを行う動物愛護団体も存在するのです」

写真:山村隆彦

 

殺処分ゼロ≠動物の幸せ

動物愛護においてよく耳にする「殺処分をゼロに」という文言。たしかにこの言葉は誰の心にも届きやすいメッセージであり、殺処分ゼロは動物愛護において理想の状態といえよう。しかし、杉本さんは「殺処分ゼロとはあくまで活動の結果であり、目指すべき目標としては不適切」と語る。

「ゼロという数字を目指すが故に、それが評価する基準となってしまうことは動物愛護団体の実態をますます不透明化してしまうことにつながります。どんなネグレクトの状況下に動物を放置していても殺さなければ『殺処分ゼロ』になりますし、行政が収容動物の殺処分を避けるため、信頼のおけない動物愛護団体に動物を団体譲渡することもあるのです。その団体が責任をもって動物を保護しているのかを行政がしっかりと把握できていないこともよくあって、殺処分ゼロが決して動物の幸せにつながっているわけではないのが現状です」

 

寄付する側にも責任を

Evaは今までに、動物虐待などで問題とされる動物愛護団体の刑事告発も行ってきた。問題とされる動物愛護団体が活動し続ける現状を解消するためには、このような第三者の監視体制を固める必要がある。そしてその役割を担うのは、団体を支援し、寄付する側であるわたしたち一般市民も同様だ。悪徳な団体に寄付金をおさめることは、「動物を助けたい」という折角の想いが動物たちに活かされていないどころか、団体の悪事を支えることにもつながってしまう。「支援・寄付する側にも大きな責任が伴う」と語る杉本さんは、「冷静に活動を見極めることが重要であり、そのためには最低限の知識が必要」と続ける。

 

動物愛護団体の見分け方

私たちが信頼のできる動物愛護団体と問題のある団体を見極める方法として、杉本さんはいくつかのポイントを挙げる。

講演会で動物愛護について語る杉本さん(提供=Eva)

まず明確な判断材料となるものとして、団体活動の収支報告を毎年欠かさず出しているか、動物が保護された背景や出自などを譲渡希望者にしっかり説明できるか。保護犬・保護猫を迎えいれる際には、その団体の主要施設を見にいって飼育環境を確認することも重要だという。また、杉本さんは街中で見かける動物をつれた募金活動について、「動物福祉に反した行動」と指摘する。善良な動物愛護団体ならば、動物を長時間ストレスのかかりやすい環境下におくような活動は基本行わない。

「保護犬・保護猫がいったいなんなのかを知ることも大切だと思います。というのも、ペット事業者もペット愛護ビジネスを巧みに利用して自分たちの不要犬、不要猫をどこかに押し付けようとそういう仕組みが構築されていて、それが動物愛護ビジネスなのか、本当の動物愛護活動なのか一般の方がある程度知識がないと一目ではその違いが判らないということがあるのです。このような知識を一般の方にも持っていただければなと常日頃思います」と、杉本さんは動物愛護について知識を持つことの重要性を強調した。

 

時代にあった法整備を

2020年6月に施行された動物愛護法において、ペットの殺傷に対する罰則は「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」から「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」に引き上げられた。署名活動を行うなど動物虐待事犯の厳罰化を訴え続けてきた杉本さんは、今回の法改正に強い達成感を覚える一方で、次の法改正に向けて既に動き出している。たとえば、飼い主が所有権を行使すれば虐待を受ける動物を救う行為は窃盗罪にあたる。また、動物を救う過程で器物損壊罪や不法侵入に問われるリスクもあるとし、このようなすみやかに動物を助け出すことが許されていない状況を杉本さんは問題視する。そのため、次の法改正では「所有権の一時停止」と「救うべき動物の緊急一時保護」についての法整備や制度の立ち上げを最優先事項とし、厳罰化した法律が今後適切に運用されることを目指すという。「法改正のためには国民が高い意識を共有することが非常に重要なので、必ず実現させるという強い思いをもって啓発活動を続けていきたい」と杉本さんは語る。

 

おもいやりは、想像

人と動物が幸せに共生できる社会の実現のため、私たちにできることは何か。杉本さんは、「動物を迎えたなら、動物も社会の一員であるという責任をもち、終生飼育をすること。何かしらの理由で飼い続けることが不可能になってしまった時のことも考え、動物が最後まで幸せに暮らせるためにはどうしたらよいか、という意識を持つことが重要」と語る。

Evaは毎年9/20~9/26の動物愛護週間にむけ、啓発ポスターを作成している

「おもいやりは、想像。」。Evaの啓発運動の大きなテーマであるこの言葉は、言葉を交わせず自らが訴えることのできない動物の立場・目線に立ち、想像力を養うことで思いやりの心も豊かになっていくという意味を持つ。思いやりに溢れた社会の実現は、動物にとってだけでなく、人にとっても幸せな社会になるはずだ。

 

  • 一般財団法人動物環境・福祉協会Evaが運営する「Evaチャンネル」はこちら

→(https://www.youtube.com/channel/UCB-Qxb4_SZE0SOza34rHWdA

 

【プロフィール】

 

杉本彩(すぎもとあや)

女優、公益財団法人 動物環境・福祉協会Eva 理事長。

幼少の頃から無類の動物好き。芸能界入りした20代、一匹の子猫との出会いをきっかけに個人で保護活動を始める。その後、全国の自治体でのシンポジウムや小学校、民間企業からの依頼で講演活動を行い、全国各地で動物福祉の向上やアニマルポリスの設立について啓発活動を行う。

2014年2月に「一般財団法人動物環境・福祉協会Eva」を設立。翌年2015年2月には、公益法人として認定される。現在は、プロジェクトの開催による動物福祉の啓発や、全国各地での適正飼養及び日本の動物がおかれている現状についての講演活動、そして子供たちへのいのちの教育、動物に関する法律および制度等に対する国及び地方自治体への働きかけなど精力的に活動している。

 

(義経日桜莉)