慶大では秋学期から障害学生支援@easeプロジェクトが始まる。協生環境推進室を中心に、義塾全体で障害学生の修学をサポートする考えだ。公募により採用された塾生らが、障害学生の支援を行う@easeサポーターに就任した。

@easeサポーターのキックオフイベントに参加する塾生ら(写真=提供)

協生環境推進室、バリアフリー関連の施策に邁進

協生環境推進室は2018年4月、ワーク・ライフ・バランス、バリアフリー、ダイバーシティの3事業を担う組織として設置された。協生環境推進室ウィークなどの啓発活動では、バリアフリーに関する映画上映、シンポジウムを実施。今年から、合理的配慮を学ぶe-learningコンテンツの作成も手掛ける。

慶大はこれまで、障害学生の修学支援を各学部・研究科内で個別に対応してきた。今年6月、総合的・横断的な体制となる、障害学生支援@easeプロジェクトをまとめ、秋学期からの活動開始が決まった。

障害の有無にかかわらず、共に学ぶ体制に

支援の本格化について、障害者問題に詳しい商学部・中島隆信教授は、「障害学生とサポーターの学生が共に学びを得られる点で、非常に良い動きだ。履修登録などは大学特有のシステムであり、学生同士だからこそ伝えられることもある。大学側の支援を補完できるのではないか」と期待する。

「慶大は、6つのキャンパス、10の学部と14の研究科を擁する組織であるため、均一な支援策の検討に苦労した」と同推進室の担当者は言う。今後は通信教育課程に在籍する障害学生への対応も含め、支援の充実を図っていきたいと話す。

実技研修も充実

サポーターの学生は、障害学生の需要に合わせ、毎年春・秋学期に募集する予定だ。サポーター希望者には選考のほか、各種研修も実施する。主に聴覚障害者のために講義内容を代筆するノートテイク・PCテイクの講座や、多様な人々への向き合い方・実践的なサポート法を学ぶ「ユニバーサルマナー検定」があり、障害別の対応に備える。求める人材について、「障害に向き合い、一緒に考えていける学生に活躍してほしい」と担当者は語った。

ユニバーサルマナー検定では視覚障害者の移動介助の実習も行われた(写真=提供)

サポーター学生、「当事者の声に耳を傾けたい」

秋学期からサポーターとして活動する予定の文学部1年の女子学生は、「応募のきっかけは障害に関する講義で、当事者の声に耳を傾ける大切さを学んだこと。押し付けのサポートにならないよう注意しながら、利用者のニーズに応えたい」と抱負を述べた。

支援ソフトを用いたPCテイクの実習(写真=提供)

慶大、障害学生支援に遅れも

障害学生支援では、慶大より先駆的な取組をする大学もある。早大や筑波大では、約20年前から障害学生支援室の設置や、有志学生による支援に力を入れてきた。協生環境推進室は、「慶大には障害学生支援室と銘打った組織がなかっただけで、支援が遅れている認識はない」との見解だが、大学間の差は否定できない。

障害のある高校生が受験を考える際、大学の障害への支援体制は重要な指標の1つになりうる。慶大は、学内のダイバーシティ&インクルージョン実現に向け、より一層の支援拡充に努める時を迎えている。

菊地愛佳