6月は「プライド月間」LGBTQ差別解消のために、慶應大学に灯る小さな熱意

6月は「プライド月間」と呼ばれ、世界各地でLGBTQ(性的少数者の総称)の権利向上のための活動が行われる。その起源は、1969年6月にニューヨークのゲイバー「ストーンウォール・イン」で起きた反乱にある。ゲイ解放運動の大きな契機となったこの反乱を記念し、6月は「プライド月間」と銘打たれることとなった。

早川さくらさん(経1)、田中七海さん(経1)、片山香子さん(経1)、岩井美衣奈さん(経1)の4人は、6月10日午前11時から約1時間、日吉キャンパス前の歩道でLGBTQについて啓発するフライヤーを塾生に配布した。今回、企画人である早川さんに、フライヤー配布の経緯や慶大で生活する中で感じた問題点、そして活動に対する彼女の熱意ついて聞いた。

「自分がやらなければ誰がやるんだろう」

今月始まった「塾生会議2022」のメンバーにも選出されている早川さん。いかに慶大がSDGsに貢献すべきか考える中で、LGBTQに関する取り組みがほとんどないことに気付いたという。友人の「慶大生の中で、LGBTQについてきちんと認識している人って、どれくらいいるんだろう」という呟きにヒントを得て、フライヤーの配布を決めた。「自分がやらなければ誰がやるんだろう」という使命感もあったと話す。

「身近なことからできることを」

オモテ面にはLGBTQに関する基礎知識が並ぶ

フライヤー作成にあたり、情報提供と活動を促すことの両方を意識したという。オモテ面では、基礎知識がない層に向けてLGBTQの区分や当事者が向き合う問題を、ウラ面ではアクションにつながるようなデザインになるよう心がけた。早川さんは、「自分がいろいろな社会問題に興味があっても、実際何をやればいいのかわからないことが多く、身近なことからできることを列挙しました」と、工夫したポイントを語った。

別紙でQRコードも配ることにしたのは、配布の2日前だった。「初めての試みだから、手ごたえを感じたかった」という思いで、アンケートをとることにした。取材時点(6月10日)で、回答者の約80%が「何か行動を起こしてみよう」と答えたという。「友人に話してみる」「LGBTQに関する書籍や映画を見てみようと思う」という答えに、「やってよかった」と喜びをあらわにした。

慶大の現状を示す、「興味ないです」という言葉

ウラ面では受け取った人の行動を後押しするよう意識した

「フライヤーを見た方が『興味ないです』と言ったのが、ショックでした」。「興味ない」という言葉に驚きを感じるとともに、傷ついたと早川さんは語る。LGBTQを含む社会問題に興味がないことが許容される日本の雰囲気こそ、差別につながるのだという。差別的な言動を指摘する人がいないと、当事者がカミングアウトしにくくなる。当事者が周囲にいない(と感じる)ことによって、さらなる無関心を生むという負の連鎖にもつながる、と指摘した。

「『興味ない』という言葉が象徴的だと思う」。慶大に蔓延る雰囲気が話題に挙がった。「こういうこと(フライヤー配布)をやろうとした人がいなかったんだな」と早川さんは思いを口にした。実は、元々日吉キャンパス内での配布を計画しており、学生部に許可を申請しに行ったのだという。そこで「公認団体でないと基本的には無理」「詐欺広告や宗教的なフライヤーの可能性があるからできません」と断られ、代替案として警察に道路使用許可を申請してキャンパス歩道で配ることを勧められた。「何か審査があればやりやすいのにな」「ハードルが高いですね」と、塾生が行動を起こしやすい体制・雰囲気作りを慶大に求めた。

小さな変革と大きな変化

「小さな変革を起こして、大きな変化を生む力が求められる」。塾生会議を通じ、慶大という巨大な組織で大きな変革をもたらす難しさを感じたのだという。今回のフライヤー配布は比較的小さな変革だったと前置きした上で、「やってみるといろいろなハードルがあり、実現するのがすごく難しかった。今年何かやったことによって、来年もっと大きなことができるかもしれない」と、手ごたえと将来のさらなる活動への意欲を語った。

最後に、早川さんに塾生へのメッセージを聞いた。
「LGBTQに限らず、性別・国籍・宗教・障がいなど、違いに寛容になってほしい。いろいろな尺度がある社会の方が美しいと思います」。早川さんは、塾生に熱意を持ってほしい、と強調した。

山下和奏