4月から2カ月が経った。新生活にも慣れて、何か新しい挑戦を検討する塾生もいるだろう。就活や留学、インターンを始める学生は、「意識高い系」という一種の嘲笑の対象になることがある。周囲の目を気にせずに、自分がやりたいこと、やるべきことに取り組むにはどうすればよいのか。登録者数148万人を超えるYouTubeチャンネル「バイリンガール英会話|Bilingirl Chika」の吉田ちかさんに、「自分がやるべきことに取り組む方法」について話を聞いた。

動画投稿のきっかけ

ちかさんは動画投稿を始める前から、ブログを書いていた。16年間過ごしたアメリカと日本の文化の違いを発信し、友人との間に生まれる新たな会話に楽しさを覚えたという。当時からYouTubeを知ってはいて、これから「動画で学ぶ」時代が来ると感じ、動画での情報発信を始めたそうだ。その後は、主に英語学習用の動画や旅のVlogを投稿している。

日本とアメリカの文化の違い

会社の中で感じた文化の違いの一つが、ミーティングの進め方だ。日本では、長さの割に何も進まずに終わったこともあったそうだ。また、2児の母でもあるちかさんは、初等教育の様子も大きく異なるという。日本では、子どもが自分の教室を掃除したり、電卓を用いない計算をしたり、と「一通り自分たちのことはできるようになる」方針だと感じるという。アメリカでは、自分の意見を発表する場を設けることで、想像力や発言力など別のスキルを伸ばしているいる印象だと語った。

日本独自の「意識高い」という言葉

もう一つの大きな文化の違いとして、「意識高い」という言葉が挙がった。英語を学ぶ塾生の中にも、「意識高い系」というレッテルを貼られた経験がある方もいるだろう。ちかさんは、「意識高い」という言葉はアメリカには存在しないと語る。「意識高いのって普通じゃないの?」「意識高くしておこうよ」と、周囲の目を過剰に気にする日本特有の雰囲気に疑問を呈した。

学習継続のカギ

どうしても他人の目を気にしてしまうとき、二つの意識が学習を続けるカギを握るという。一つ目は、学習するための明確なゴールだ。「私はこのために英語を勉強するんだから、誰が何と言おうといいんだよ」という熱意が必要だという。二つ目は、「好きだから」という動機だ。たとえば、洋画が好きで字幕なしで観たいという人は、好きだからこそ積極的に吸収して英語が話せるようになるそうだ。2つの意識がどちらも無い状態では、英語以外でも挫折を繰り返してしまう、とちかさんは語った。

コンテンツ制作の工夫① コミュニティ作り

ちかさんがコンテンツ制作にあたって意識しているのは、「コミュニティ作り」だという。取り組みの一つに、視聴者とちかさんが双方向に発信できる「C-place」というコミュニティがある。視聴者が自分自身のことを投稿することで、近いマインドを持つ人がつながり、英語学習の継続に結び付いている。一人ぼっちだと英語の勉強は楽しくないし、どんどん優先順位が下がってしまう。「だからこそ、『〇〇までにTOEICの勉強をしよう』という仲間を見つけるのは、学生にとっても大事なのかな」とちかさんは言う。ちかさんのパートナーで、動画にも出演する「おさるさん」は、「『C-place』のイベントでは、日本人同士で英語を喋ろう会もある。それって、一般的に言ったらめちゃめちゃ意識高くないですか?」と語る。相手が誰であろうが英語を話す、というマインドを持っている人は流暢に英語が話せるようになるのだという。

コンテンツ制作の工夫② きっかけを届ける

もう一つちかさんが意識しているのは、「一歩踏み出すきっかけ」になるコンテンツを届けることだ。視聴者の背中を押すことで、「何かちょっとやってみようかな」と思ってほしいのだという。たとえば、旅行英会話アプリを制作した際には、実用性をテーマにした。「前回の旅でしなかった会話が生まれた」という達成感を味わってもらうことで、利用者が海外に行くことや、海外で他者に話しかけられるように後押しした。留学生に動画を投稿してもらうプロジェクト、「ちか友留学生活」にも同様の狙いがあった。大変ではあるが充実した留学生の生活を見ることで、「意識高くてもいいんだ」と思える場を提供した。「友達の前だと恥ずかしくて言えないことでも、目標や趣味ありきで見つけたコミュニティは、そういう考えを捨てられる。」留学という目標を持つコミュニティ作り、そして留学を漠然と目指す学生のきっかけを作りたかったのだと語った。

塾生へのメッセージ

最後に、コロナ禍で満足に活動できない塾生に向けたメッセージを聞いた。「コロナが続いて、モチベーションをキープするのも上げるのも難しい時期だと思います。どんな状況であれ、その場でできること、将来のために自分に何ができるのか、というのを意識すると、今と未来がつながって、やらなきゃいけないことに日々取り組めると思います。もうちょっとで海外に行けたり、留学に行けたりできるようになると思うので、みなさんがんばってください。」自分の人生を決めるのは、他人の視線ではなく自分自身である。自分の将来のために、今こそ意識を高めてみてはいかがだろうか。

山下和奏