「めんどくしぇ」が合言葉

おのくんの名字は「めんどくしぇ」。これは、特に初期の頃、お母さんたちが口々に言っていた言葉だという。

「慣れない縫い物を急にやることになったお母さんたちは、針に糸が通らず、誤って指を刺してしまったときに、『めんどくしぇ』。来客のコーヒーやお茶の用意のために立ち上がるときに、『めんどくしぇ』。他にも、照れ隠し的な意味で、集会場にたくさんの人が来た時に『めんどくしぇ』をいうこともありましたね」

おのくんという名前がまだない頃、この様子を見たNHKの小野文恵アナウンサーが、「めんどくしぇ人形」と色紙に書いた。それがきっかけで、「めんどくしぇ」が名字になったという。

「3つのかんきょう活動」で伝えたい想い

おのくんの掲げるテーマを象徴的に表すのが、環境・感教・間協という「3つのかんきょう活動」だ。1つ目は、東日本大震災で失われた自然環境や生活環境にもう一度目を向け、0から作り直す環境活動。2つ目が、一緒に感動する体験をするという意味の感教。これまで挑戦したことがないことをやってみるといろんな感情が動くのではないかという思いから、里親さんたちのアイデアも取り入れながら、朗読会やワークショップを開催する。3つ目は、○○間協力という意味での間協。里親さんの協力のもと、おのくんは様々なプロジェクトを成功させてきた。過去には、おのくんのデザインのタンブラーを作ることで、おのくんの着ぐるみをつくるプロジェクトを成功させた。その時に生まれた着ぐるみは「でっかいおのくん」として、各種イベントで人気を博している。

 

除菌POPでみんなを笑顔に

おのくんと消毒液用のPOP(除菌POP)(写真=提供)

2020年、「おのくん」のプロジェクトに、深刻な影を落としたのが新型コロナウイルスの感染拡大だった。コロナ禍以前は、年間2万~3万人が、東松島に里帰りしていた。2014年から毎年5月に開催されている「めんどくしぇ祭」は、おのくんの誕生日を祝おうと、全国各地から約2000人の里親さんが集う人気イベントだ。

新型コロナの影響で、東松島に里帰りする人は、10分の1から20分の1程度になった。さらに、「めんどくしぇ祭」や松島基地航空祭の中止により、東松島に訪れる観光客の数が激減した。全国各地でのイベントが全て中止となった2020年は、我慢の1年だった。

おのくんの消毒液用のPOP(除菌POP)の作成に取り組むお母さん。(写真=提供)

2021年は、里親さんたちとのつながりを大事にしながら、新しいプロジェクトに挑戦する。新型コロナウイルスの収束と医療従事者応援のため、おのくんの消毒液用のPOP(除菌POP)の無料配布をインターネット上で始めた。

「お母さんたちにとって、全国各地におのくんを応援してくれる人がいることが、活動の活力や生きがいになっています。だからこそ、今、最前線で戦ってくれている医療従事者の皆様に応援しているよという声を届けたいと思いました。除菌POPをきっかけに、様々な活動に取り組む中で、新たなコミュニティの必要性を感じています。全国各地、そして世界中への助け合いの輪をつくろうというのが今の目標です」と新城さんは語る。

おのくんの除菌POPは、「めんどくしぇ!!けど除菌除菌」というキャッチフレーズとかわいらしいイラストが特徴的だ。さまざまな人に笑顔を届けながら、設置場所は次第に広がっている。「『めんどくしぇ』というネガティブな言葉も、愛を持って使っていると、素敵な言葉になっていくんですね」という嬉しい言葉も届いているという。

 

里親になるには

消毒に取り組むおのくん。(写真=提供)

 

以前は、東松島に行くか、全国各地で行われるイベントに足を運ぶか、電話もしくはファックスでの受付だった。電話やファックスの場合は、サイズや色の系統の希望はできたが、どんなおのくんの里親になれるかは届くまで分からない仕組みだ。

「全国各地のイベントでは、当初、東松島の4名程度のスタッフが全て運営していました。その後、共同代表の2人が現地に向かい、あとは現地の里親さんに参加してもらって、一緒にイベントを成立させるようになりました」と新城さんは話す。

コロナ禍により、全国各地でのイベントの実施や東松島への訪問が難しくなった現在は、Webでも受付をしている。電話やファックス同様、どんなおのくんの里親になれるかは、届くまでのお楽しみだ。

 

世界中の人に知ってもらえるキャラクターに。共同代表の新城隼さんと武田文子さん、そして、おのくんのお母さんたちと心を一つに、おのくんの挑戦は続く。東松島の「空の駅」で、世界に一匹だけのおのくんと出会える日が待ち遠しい。

 

(塚原千智)

 

 

「おのくん」

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