報道

《定年退職者インタビュー》法学部 大石裕教授

今年3月31日をもって、法学部の大石裕教授が26年間の母校での教授人生に幕を閉じる。大石教授の専門は主に政治コミュニケーション論、ジャーナリズム論だ。慶大では、政治学科とメディア・コミュニケーション研究所(以下、メディアコム)でゼミを担当するほか、ジャーナリズムに関する数々の講義を行った。

大石教授は85年慶大法学研究科で博士号を取得したのち、5年間政府系シンクタンクで調査・研究を行った。その後、関西大学で教鞭を執り、95年に慶大に赴任した。最近では、教授として数々の講義・ゼミを担当するほか、慶大の常任理事を務めている。

また、自身の研究成果として、数々の研究書を著し、教科書として『コミュニケーション研究』を出版するなど、多数の書籍の執筆に関わった。

現在の心境

大学の理事の任期がまだあるため、感傷に浸る暇はないのが正直なところ。でも、学部のゼミが先日終了し、学生に花束をもらった時は感慨深かった。

 

メディアに興味をもったきっかけ

小学生の頃から、新聞を読むことに面白さを感じていた。初めはスポーツ面に向いていた関心は成長するにつれ、政局記事へと移っていった。そんな中、多感な時期に三島由紀夫の自殺という事件に衝撃を受け、社会に目を向けることになった。同時ラルフ・ネーダーの活動を通じて環境問題に関心を持つなど、社会問題に対するアンテナが高まっていった。

 

学者の道を選んだ理由

いくつかのメディア企業を受け、その道に進むことも考えたが、ゼミの教授の「好きなことを好きなだけ書きたいなら研究者がいいかも」という助言や大学院に進学した兄の存在が、院進学への背中を押した。

大学院修士課程で研究生活を送るなかで、面白さを感じ、政治コミュニケーションを研究するうえでの自分なりの覚悟ができたため、研究者の道を選んだ。

 

学生との思い出深いエピソード

研究とは自分で問いを立て、自分で答えることだが、ゼミに入った当初は、自分で問いを立て、答えを導くのが苦手な学生もいた。そのため、読書、映画鑑賞、旅など、いろいろな経験を積むことを勧めた。メディアや社会に対する見方を広げ、個性的なジャーナリストへと成長をとげた学生は特に印象に残っている。

先日、私のゼミ生だった記者のバイデン新大統領に関する記事を読んだ。その教え子は地に足をつけた取材を通して現在のアメリカに希望の光を連想させる言葉を引き出しており、彼の記者としての成長ぶりをとても嬉しく感じた。

 

メディアコムの魅力

メディアコムは慶大のジャーナリスト養成基地として大学内外から高い評価を受けている。所属学部で主専攻として法律や経済、社会学等を学び、副専攻としてメディアやジャーナリズムを学ぶことで、メディアを社会のなかで相対化できる。

 

コロナ報道の問題点

今の報道では、医療崩壊の実態が見えてこず、どこか別世界で起きているような印象さえ抱いてしまう。取材の時間とエネルギーをコロナ禍の本当の現場である医療現場に割くべきだ。そのためには、病院の実態を定点観測的に、より深く報道する必要がある。

 

今後の人生の予定は

研究では、学説史を書くこと、それから例えば「新聞は三島由紀夫をどう書き、評価してきたか」といった問題について、歴史認識と結びつけながら論文を書いてみたい。

現在はBPO(放送倫理・番組向上機構)の委員やヤフーニュースの会議の委員を務めている。研究者としての立場を忘れずにメディアの現場と関わっていきたい。

 

最後に学生に一言

私たちはテレビや新聞、ネットのサイトの情報をそのまま受け入れてしまいがちだが、情報は組織や人の手によって作られ、編集されたものであることを忘れないでほしい。

 

(粕谷健翔)

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