悪質な宗教団体などのカルトが新規メンバー獲得のために、SNS上で大学生に正体を隠して接触を試みるという事案が発生している。例年であれば、新入生オリエンテーションで1年生に対してカルトについての注意喚起がなされる。しかし、今年度は新型コロナウイルス感染症によってオリエンテーションが中止になった。今年度入学した1年生の多くはカルトに対して「無防備」な状態と言えるだろう。そこでカルト問題に詳しい立正大学心理学部の西田公昭教授に話を聞いた。

西田公昭教授(写真=提供)

 

カルトって何?

個人の人権を奪って組織のために行動させる集団のことです。個人は組織や教祖などのリーダーへの絶対服従を求められ、学業にまで干渉されます。「カルト=宗教」のイメージが強いですが、宗教に限らず、悪質なNPOやボランティア、情報商材など、多岐にわたります。

 

どんな勧誘方法?

最も多いのが、サークル活動を装いキャンパス内で声かける方法です。また、カルトの構成員となってしまった友人が勧誘をしてくるパターンも多いです。

そして現在増えているのが、SNSを利用した勧誘です。学生生活や就活に悩む学生にサークルや就活塾を騙ってSNS上で声を掛ける勧誘方法が増えています。そのため、特に1、3年生は注意が必要です。

また最近散見されるのは、SNSで「○○大学に行きたい!」と発信した高校生にメッセージやリプライ機能で素性を隠して接触するパターンです。カルトにとって、この方法は個人情報を収集し、大学に入学した後でカルトへ引きずり込むことができる有効な方法です。

 

カルトは普通のサークルを装って近づいてくるが、近づかない方が良いサークルの特徴は何か?

誰がどのような仕組みで運営しているかが分からないサークルや都合の良い話しかしない、都合の悪い質問をされるとごまかすようなサークルは避けた方が良いです。

 

なぜ、元々「普通の人」だった人が偽装サークルなどでカルトに引きずり込まれることで、多額の金銭を組織に納めたり大学を中退したりしてしまうのか?

カルトに引っ掛かってしまった「普通の人」は、偽装サークルなどで本人が気付かないうちに「組織や教祖の言うことは絶対」というカルトの思想を刷り込まれていきます。そして次第に自分の意思を持つことを放棄するようになってしまい、多額の金銭を組織に納めたり、組織の活動のために学業を放棄したりするようになります。

 

友人がカルトにハマってしまった場合の対処法は?

対処法は友人がどれだけハマってしまっているかによって異なります。初期段階であれば、学生課に相談、かなりハマってしまっているようであれば本人の保護者に相談すべきです。

 

大学生に伝えたいことは?

1980年代以降は統一教会(現在の名称は家庭連合)による霊感商法、2000年代では摂理による女性信者に対する性的搾取がメディアで取り上げられました。これらの団体による大学での偽装勧誘はいまだに活発に行われているにも関わらず、現在ではメディアに報じられません。そのため、カルト問題は現在の学生にとって「過去のこと」「自分とは関係ないこと」と捉えられている傾向が強いです。学生たちにはカルト問題は現在進行形の社会問題である、という認識を持ってほしいです。また、カルト問題は複雑な問題なので時間をかけて丁寧に学んでほしいです。

悪質なカルトは偽装サークルやSNSを通じて巧妙に学生に近づいてくる。充実した大学生活を送るために「自分は大丈夫」と思わずに自分の周りに近づいてくる人間には細心の注意を払っていただきたい。

 

 

(石田裕大)