7月4日、SFC恒例の七夕祭が、開催された。31回目となる今年のテーマは「繋(つなぐ)」。新型コロナの影響でキャンパスでの開催は中止となり、史上初のオンライン開催となった。異例の試みでありながらも、会場となったcluster内のバーチャルSFCキャンパスには七千人を超える参加があり、ツイッターでは「#オンライン七夕祭」が日本のトレンド入りを果たすほどの盛況ぶりだった。先の見えない状況下で伝統を守り抜いた、七夕祭実行委員会代表の七条祐香さん(環2)を取材した。

 

「本当にショックでした」。七条さんはキャンパスでの開催ができないと知った時の気持ちをこう語った。七夕祭はSFC開校当初から続く、地域と大学の架け橋となってきた大切なイベントだ。今年の開催に向けても、実行委員会は昨年12月から準備を始めていたという。七夕祭にかける思いが強かった分、通常通りの開催中止が実行委員に落とした影は暗く大きかった。しかし、彼女らの七夕祭への熱が悲しみにかき消されてしまうことはなかった。

「コロナに負けたくない。コロナ禍でも学生同士がつながれる機会を作れたら」。そんな強い意志がオンライン開催の核となった。「繋」というテーマのもと、学生同士の、さらに地域と大学のつながりが深められる祭りにするための挑戦が始まった。

射的場にて射的大会が行われるなど、来場者があっと驚く企画がさまざま行われた。

今回の七夕祭において、七条さんが挙げた一つ目のポイントは、「例年の七夕祭をオンラインでも実現すること」だ。

バーチャルSNS「cluster」でキャンパスを再現し、その中でステージも例年通りの場所に設置。出演団体があらかじめ制作した映像を放映する形でステージ企画を行った。技術面では、実行委員でないSFC生からの協力もあり、キャンパスに笹や提灯を設置するなど細部までこだわり抜いた。こうして隅々まで七夕祭を感じられる、高クオリティーのキャンパスが完成したという。地域の幼稚園生に毎年書いてもらっている短冊企画も、インターネット上での掲載によって今年も実現した。

最も力を入れた企画の一つが花火だ。例年通り、七夕祭の最後に打ち上げられたが、花火の映像制作は全て実行委員が担ったという。

オンラインながら七夕祭名物の花火が打ち上げられ、その迫力に多くの来場者が魅了された。

「知識がゼロの状態から始まりました。いろいろな花火大会の映像を見て研究し、その種類や構造を考え、ソフトも一から学んで作ったという感じですね」と七条さんは苦労を語りながらも笑顔を見せた。

 

二つ目のポイントは「オンラインでしかできない企画をすること」だ。会場内を歩く実行委員のアバターを3体見つけると、浴衣を着たアバターがもらえる企画や、「インターネットの父」と呼ばれる村井純教授の講演が行われるなど、コロナ禍の今にぴったりの内容で盛況となった。

「全ての連絡をオンラインで行なったため、準備に難しさはありました」という七条さん。例年より参加団体への声かけを増やすなど、円滑な意思疎通を図るためさまざま工夫したという。また、当日のステージ企画で動画が流れないハプニングも、準備を全てオンラインで行った実行委員会のチームワークで乗り切るなど、実行委員同士の「つながり」も盤石だった。

直接対面で集まることができない中、実行委員会はテレビ会議システムを用いて準備を進めた。

ツイッターでの盛り上がりについて、「本当にキャンパスに来たみたいだとか、今年も花火が見られてよかったとか、そういう声が多く聞かれたので、それが嬉しかったです」と満足そうに七条さんは振り返る。

高校生の頃から学園祭が大好きで、七夕祭をもっと大きくしたいという思いで実行委員になった七条さん。彼女の熱い願いは、打ち上げられた花火と一緒に、後輩の心にも天上の織姫と彦星にも届いたに違いない。

 

西室美波

 

※写真は七夕祭実行委員会提供(一部画像を加工しております)