《学問特集》のぞいてみよう、大学の窓~悔いのない学科選びを~(社会工学編)

自分が本当に興味のある学問分野を見つけるのをサポートするために各学問の概要などを解説していくこの企画。今回は、理工学部管理工学科の田中健一教授に、社会工学について聞きました。

社会工学の研究対象や研究テーマは何ですか?

社会工学は、文字通り、社会に関わる問題を工学的に解決することを目指す学問です。「社会」と「工学」は関連が低いと思われるかもしれません。しかし、社会における種々の問題に対し、複数の計画代替案を評価し、優れた実施計画を決定するためには、工学的なアプローチが有効な場面が多々あります。

社会工学では、評価対象に関する数理モデルを構築し、モデルの解を導いて現実問題の解決を目指すところに大きな特徴があります。

 

田中教授は具体的にどのような研究をされているのですか?

私の研究内容は「社会システムのモデリングと最適化」です。オペレーションズ・リサーチ(問題解決学ともいわれる学問です)の手法を土台に、都市工学上の諸課題に対して数理モデルを構築し、問題解決を図ることを目指しています。

最適化手法を用いた都市インフラの設計、公共システムの評価・分析・設計、空間データ・流動データの解析と可視化、「流域」に着目した都市計画・空間解析などの幅広いテーマを取り上げ、新しい数理モデル開発と現実問題への応用の両面から研究を進めています。

 

他分野ではなく社会工学を研究の専門にされたのはなぜですか?

私の出身学科である管理工学科は、理工学部にありながら、社会の問題を「人間」「もの」「情報」「金」を柱とし、問題解決を図ることを目的としたユニークな学科です。そのなかで、「都市工学」が専門の栗田治先生(現管理工学科教授)の研究室で学んだ経験がきっかけでこの分野を専門的に勉強したいと思いました。人間や都市に関わるやわらかいテーマについて数学を使って分析したり課題解決を目指したりするアプローチが大変新鮮でした。

 

高校のときや大学初年度の勉強のうち、今でも役に立っているものは何ですか?

物理学を勉強したことが特に役に立っています。「社会工学」や「都市工学」では、社会の問題を抽象的・客観的に捉え、数学を用いて対象を記述するモデルづくりのプロセスが重要です。「物理学」の、自然現象を貫く法則を、できるだけシンプルな仮定に基づいて説明するという態度は、社会に関わるモデルづくりをする際にもお手本になります。

また、数学はあらゆる学術分野の基礎ですので、(いわゆる文科系を志す人も)若いうちに勉強しておくと役立つと思います。客観的、合理的に物事を考える上で、数学は重要な役割を果たします。また、英語は海外に向けて研究成果や情報を発信する際に必須ですので時間のある若いうちに勉強しておくことをお勧めします。

 

社会工学における研究は、どのように社会に生きていますか?

具体例を挙げましょう。都市において種々のサービスを提供する施設(例としては消防署、図書館、鉄道駅など)を、利用者にとってアクセスしやすいように配置したり、多くの客を確保できる場所(商業店舗や英会話スクールなど)を決定したりする「施設配置問題」は、社会への適用という点で非常に分かりやすい例です。

また、道路網、鉄道網、上下水道などのネットワーク型インフラをどのように整備すればよいかを追求する上でも社会工学が活躍します。

 

社会工学の雰囲気をつかむのに適している本はありますか?

以下の二冊の教科書をおすすめします。前者は、都市工学における幅広いテーマについて数理的なアプローチが多岐にわたり解説されています。後者は、オペレーションズ・リサーチの数理モデルを多面的に紹介しています。どちらも現実問題を数理的に表現する過程(数理モデリング)にも重点を置いた優れた教科書であり、「社会工学」に触れてみたい初学者にとって大いに参考になります(ただし、高度な内容も含まれています)。

栗田 治:都市と地域の数理モデル―都市解析における数学的方法―、2013、共立出版。

森 雅夫、松井知己:オペレーションズ・リサーチ、2004、朝倉書店。

 

(あかほし)

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