アナウンサーの登竜門といわれる、ミス慶應コンテスト。知名度が高く例年話題を集めているが、今年は異例の事態を迎えている。

2つの異なる団体、「学生団体KOPURE」と「ミス慶應コンテスト2019実行委員会」が並立し、コンテストが2つ開催されることになるのだ。

そもそも、「ミス慶應」の名称を使う権利は、誰が有しているのか。またこの問題について、商標権の観点から解決することは可能なのか。商標権や特許に詳しい、弁理士の奥田百子さん(塾員)に話を聞いた。

 

そもそも商標権とは

商標権とは、商品やサービスの標識(文字、図形、立体的形状、音、動きなどから成る)を商標権者が独占的に使用できる、という権利である。

その権利を得るためには、特許庁に商標登録を認めてもらう必要がある。

その際の条件として、他者が先出願、先登録していないことや、識別性があること、他人の周知な名称を使っていないことなどが挙げられるという。これらを充たし、特許庁に登録を認められた場合、商標権が発生する。

その結果、商標権を持つ、個人や法人は、他社がその商標を使用することを禁止できる。不当な使用を発見した場合、損害賠償を請求することもできる。

 

「ミス慶應」を商標登録することはできるか

それでは、この「ミス慶應問題」は、商標登録をすることで解決されるのだろうか。

理論上はうまくいきそうであるが、実は「ミス慶応」の商標を出願した会社がいたが、これは拒絶されている。知財防衛株式会社がこの出願をした際、特許庁は「『慶應義塾』の略称である『慶応』の文字を含んでいるが、慶應義塾の承諾を得ているとは認められない」として登録を認めなかった。

奥田さんによると、自社の生産活動とは別に、お金儲けを目的として、むやみに商標登録をする企業も存在するという。

「ミス慶応」の件でいえば、「慶應」という名称は、慶應義塾が有するものであり、関係のない会社が保有できるものではない。「もし、慶應の学生団体が慶應義塾大学の許可を得て『ミス慶應』を商標登録出願するならば、登録される可能性は大いにある」と奥田さんは指摘する。

つまり、どちらか一方の団体が「ミス慶應」の名称を商標登録することができれば、開催組織は1団体となり、この問題が解決される可能性は高い、ということである。

 

商標権の本質とは

しかし、考えてみてほしい。商標権は「製作者の権利を守るためのもの」。ミスコンは年に1度、塾内外問わず多くの人が注目する、華々しい舞台である。

どちらの団体が「ミス慶應コンテスト」の運営資格を持つかを争うために、商標権が存在するわけではない。

「誰が開催するか」ではなく、「どのようなミスコンにするか」。本質を見失わない、ミスコンの晴れ舞台を期待したい。

(南部 亜紀)