企画

作詞家・松本隆さんインタビュー 「ことば」を風に乗せて世界へ

時空を超えて吹く「風」

―松本さんの詞にはなぜ「風」が登場するのでしょうか。

一つは目に見えないものであるということ。人間って凄く大切なものは必ず目に見えないんですよ。愛、風、正義……神様も目に見えない。目に見えなくて大事なものに、若い時からずっとひかれている。目に見えるものはそんな大したものではないな、お金とか、地位とかも目に見えるんだよね。あと風っていうのは、目に見えないだけじゃなくて動いている。とても普遍的なもの感じがしたのね。例えば国境関係なく吹いてる。分け隔てなく気持ち良い風は吹くし、暴れるとすごいことになるし。そういった動くもので水は目に見えるので、風のほうにひかれていったんです。

もう一つは、動物が危険を察知するときに風の中ににおいが入っていて、そういったものを嗅ぎとる。今でいう情報みたいなものが風に含まれている。

―では、松本さんの作品の舞台「風街」の由来は何でしょうか。

1964年に東京オリンピックがあって、それまで住んでいた家が道路(青山キラー通り)になっちゃったのね。それまで慣れ親しんだ風景が急になくなっちゃった。でも夢を見たり、目を閉じたりすれば少年時代に住んでいた街の記憶があるわけじゃない。その記憶の街を「風街」と定義した。記憶の街は目に見えない、自分にしか見えない。それは風と同じだなと思って。今、現実にある街よりもその自分の中の記憶の街を大切にしたいなと、学生時代の僕は思ったわけさ。

―時代を超えて松本隆さんの詞が愛され続けている理由は、何だと思いますか。

自分でもわからない。論理的に説明できない、感覚的にはわかるんだけど。「風をあつめて」(はっぴいえんど、1971)を今誰かが歌っても、まったく古く感じない。まだ自分でもわからないから、後世の人たちに解き明かしてもらわないと(笑)。

なんかわからないけど古くならないんだよ。もうこれボツねって思うものまでみんな掘ってくるから(笑)。スターボーとかね、忘れてくれればいいのにとか思うんだけど。あれはクドカンが言い始めたのかな。

僕、時代全然関係ないからね(笑)。はっぴいえんどは70年代という時代を背負っているんだけど。でも「風をあつめて」を聴いても70年代だけではない。今の学生が聞いたってわかってもらえるかもしれない。

「風をあつめて」に限っては、国境を越えちゃっている。中南米の人が日本語で歌ってるし、デンマーク人の僕より背の高い女の子がやっぱり日本語で歌っている。僕の唯一の人に誇れることは、日本語を日本語のまま輸出した。そういった意味では革命だね、音楽に国境がないことを証明した。日本語のまま覚えさせたんだよね、みんな鼻歌で歌ってる。それはソフィア・コッポラさんの映画(『Lost in Translation』、2003)の主題歌になったんで、彼女に感謝しなければいけないんだけど……。細野晴臣と松本隆は喜んでる(笑)

細野(晴臣)さんがニューヨークでコンサートをやったときに、演奏終わって楽屋の出口行ったら、全員日本語で歌っていた。なぜすごいかというと全部口コミだから、はっぴいえんどは。広告費2万5000円だから(笑)。『ミュージック・マガジン』の4分の1ページの広告費が5万円なの。それを遠藤賢司と分け合って2万5000円。2万5000円でね、やり方によってはレジェンドになれるから。それは全然他の人たちと違う。みんな鳴り物入りで売り出してもらっている。僕らは口コミだけで、外国にも働きかけてない。それも成り行きと口コミだけ。口コミだけで中南米いったらすごいよね(笑)。

どのメディアにもお世話になっていない。売り出してもらったことがないから、誰とでも対等に話せるの。どんな偉い社長さんが来ても、へこへこしなくていいわけ。それはすごくはっぴいえんどの強み。内田裕也さんにもへこへこしなくていい(笑)。

松本隆(まつもと・たかし)

作詞家。
1949年7月16日生まれ、東京都出身。
1969年に細野晴臣、大滝詠一、鈴木茂とともにロックバンド「はっぴいえんど」を結成し、ドラムと作詞を担当。「日本語のロック」を立ち上げ、その後の日本のポップ・ミュージックシーンに多大な影響を及ぼす。
「はっぴいえんど」解散後は作詞に専念し、75年『木綿のハンカチーフ』(太田裕美)のヒットにより注目を集め、81年『ルビーの指環』で第23回日本レコード大賞を受賞。アグネス・チャン、KinKi Kids、近藤真彦、松田聖子、薬師丸ひろ子など400組を超えるアーティストに作詞を提供し、数多くのヒット作品を手掛ける。
作詞活動45周年を迎えた2015年には作詞数が2100曲を超え、オリコンヒットチャート1位を記録した曲は52曲、ベストテン入りした曲は130曲を超える。同15年には「風街レジェンド2015」と冠したライブを行った。作詞を手掛けたアーティストが多く出演し、自身も「はっぴいえんど」のドラマーとしてステージに立った。また2016年3月「第66回芸術選奨文部科学大臣賞」、2017年には、クミコwith風街レビュー「デラシネ」では全作詞を手掛け第59回日本レコード大賞優秀アルバム賞を授賞、11月には昭和から現在まで第一線で日本の音楽史を支えてきた功績により紫綬褒章を受章。2018年4月にはシューベルト歌曲集の現代語訳による「白鳥の歌」をリリース、作詞活動50周年にむけ意欲的に制作活動を行っている。

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